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頂上対決と伝説の行方。
~メイウェザーvs.パッキャオを占う~
posted2015/05/02 11:00
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
AP/AFLO
フロイド・メイウェザー対マニー・パッキャオの頂上対決が、すぐそこに近づいた。試合が決まった直後は、もはや賞味期限切れではないか、という声が高かったが、やはりこれは世紀の一戦だ。見たい気持は日に日に高まってくるし、試合前の予想や推理も複雑に入り乱れる。
なぜいまごろになって、という素朴な疑問には、この際、眼をつぶろう。大金の絡んだ引退興行という噂が絶えないことも承知しているし、たしかにその可能性は否めない。メイウェザーが38歳、パッキャオが36歳という年齢を考慮しても、これが「最初で最後の対決」になることは疑いを容れない。
ふたりの対決は、2010年3月に実現するはずだった。だがこれは、試合直前のドラッグテストをめぐって両者が合意しなかったために流れた。実はこのときも、「最後のチャンス」という見方が多かった。たしかに、近年のふたりはKO率が明らかに低下している。
「パッキャオには全盛期の力が残っている」
メイウェザーは、'06年11月にカルロス・バルドミルを判定で破ってWBCウェルター級タイトルを獲得した。以後の成績は、10戦10勝2KOだ。同時期のパッキャオは('06年11月にエリック・モラレスを3ラウンドでKO)、17戦して15勝2敗6KO。ただし、KO勝ちは'09年11月のミゲール・コット戦が最後だし、2敗のなかにはフアン・マヌエル・マルケスに6回で「撃墜」された衝撃のKO負け('12年12月)が含まれている。あのシーンを見た人の多くは、これで頂上対決もお流れ、と思ったのではないか。
しかし、パッキャオは復活した。このあとは3戦3勝。'12年6月、ティモシー・ブラッドリーに疑惑の判定で奪われたWBOウェルター級王座も、'14年4月には文句なしの判定で取り戻した。世界一の名トレーナーと呼ばれるフレディ・ローチは「パッキャオには全盛期の力がまだ残っている。足も衰えていない」と自信を覗かせる。