フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
羽生をテンとフェルナンデスが追う!
上海世界選手権での激闘を予想する。
posted2015/03/23 11:00
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph by
REUTERS/AFLO
上海世界選手権の開催を1週間後に控えた3月18日、羽生結弦が出場の可能性が濃厚であることが発表された。
試練というものは、乗り越えられる人間のところに行くのだろうか。この1年間の羽生を見ていると、そう思わざるを得ない。
11月の中国杯での衝突事故から立ち直り、12月にはみごとに二度目のGPファイナルタイトルを手にする。これで全快か、と思われたのもつかの間だった。
12月末に全日本で三連覇を果たした後、GPファイナル時から悩まされていた腹痛のため精密検査を受けた羽生。結果は尿膜管遺残症という珍しい病気で、即日手術を受けた。2週間の入院と1カ月の安静が必要とされていたが、練習開始後に今度は右足首を捻挫と報道された。
「万全ではない中で、挑まなくてはならない」
一体どういう状況なのか。メディアも自粛ムード気味で、これまでそっと様子を見守っていたが、3月18日、日本スケート連盟の小林芳子フィギュア強化部長が、出場する見通しであることを発表。「少しずつ練習量を増やし、最終調整を行なっている」と語った。
詳しい練習内容などには触れず、「万全ではない中で挑まなくてはならない。気持ちよく氷の上に立てるように見守ってあげたい」とコメント。過剰な報道でプレッシャーを与えるようなことは避けてほしいことを匂わせた。
11月は中国杯で衝突事故の後、怪我をおして出場したことに懸念を示す声も大きかった。世界選手権の会場は、中国杯が行なわれたのと同じアリーナである。再び万全ではない体で、あえて挑むのは本人の強い意志なのだろう。
まだ次の五輪まで3年ある。五輪連覇を狙う羽生にとって、今季の世界選手権は、何が何でも守らなくてはならないタイトルではない。最終調整してみた上で、怪我をこじらせるという可能性があるのなら、引くという決断をする勇気も持って欲しいと切に願う。