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チェルシー進化の象徴、アザール。
使命は「得点」から「勝利の実現」に。 

text by

山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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photograph byTomoki Momozono

posted2015/02/21 10:30

チェルシー進化の象徴、アザール。使命は「得点」から「勝利の実現」に。<Number Web> photograph by Tomoki Momozono

スピードに加えて力強さを手に入れ、さらにピッチ上での存在感が増しているアザール。胸に日本語で息子の名前のタトゥーを入れていることでも有名。

ジェラードからボールを奪い取る守備面の成長。

 指揮官は、期待の眼差しでワールドクラスの潜在能力を持つ「腕白小僧」を見守ってきた。だからこそ、「若手では欧州屈指」と褒める一方で、時には厳しくアザールの尻を叩いてきた。

 当のアザールも、モウリーニョの下で自分を磨こうという向上心が高い。課題とされたハードワークの意識にしても、昨季中に改善が見え始めてはいた。但し、監督からの叱咤を必要とした。これは他の「キッズ」にも共通していたが、従順なウィリアンなどは大人しく指示に従っていたのに対し、アザールは、プレッシングやチェイシングを求める監督の怒鳴り声に、しかめっ面を浮かべながら反応することもあった。

 しかし、師弟関係2年目のアザールは、当たり前のように守備面でも貢献できるようになっている。「敵を攻めるのが自分の役目だけど、相手ボールの時にはチームメイトを助けなきゃならない」というコメントまで出すようになった。今季は自陣内でのボール奪取にも積極果敢だ。

 印象的な場面のひとつは1月のリバプール戦(1-1)で見られた。アザールがボールを奪い取った相手はスティーブン・ジェラード。アンフィールドでのリーグカップ準決勝第1レグで、勝利への気魄は人一倍だったはずのリバプール主将だ。

 そのジェラードがファーストタッチでボールの勢いを殺し損ねると、アザールは体格で勝る相手との競り合いに臆することもなく、素早くジェラードの前に体を入れてボールを自分の物にした。身長173cmの背中に跳ね返された183cmのジェラードは露骨に苛立ちの表情を浮かべていた。

強引さが陰をひそめ、戦略的なドリブルが増えた。

 こうした成長の跡は本職の攻撃面にも見て取れる。ジェラードからボールを奪ったアザールは、得意のドリブルでハーフウェイラインを越えた。行く手には相手が2名。背後からはジェラードが物凄い形相で迫っていた。昨季までのアザールであれば、そのままドリブル突破を試みていたように思える。自ら先制のPKを決めて気分的にも乗っていたはずだ。

 だが実際には、内容的には敵が優勢だったピッチ上で確実にチームに貢献する方法を選択している。無理に突進を続けずに減速しながら横に流れ、猛追してきたジェラードのファウルを誘ってFKを奪ったのだ。その5分後には、同じようにしてルーカス・レイバからもFKを奪っている。前半にしてジェラードとルーカスが警告を受けることにもなったアザールの賢いプレーは、対峙する相手MF2名を牽制する意味でも効果的だった。

【次ページ】 被ファウル数、ドリブル成功数がリーグトップ。

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