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<独占公開、W杯の真実> 矢野大輔・ザックジャパン通訳日記 ~運命のコロンビア戦とザックジャパン最後の1日~
text by

矢野大輔Daisuke Yano
photograph byHirofumi Kamaya
posted2014/11/13 11:30

「4年間のサイクルに終止符を打つことを皆に伝えたい」
<2014年6月25日(水)>
11時30分から原(博実。JFA専務理事兼技術委員長)さんと話す。その後、会長の大仁(邦彌)さんも合流する。
監督 「この4年間、サポートしてくれて感謝している。肝心なW杯で満足いく結果を残せなくて心苦しいが、もっとこのチームはできると心から信じていた。しかし、このような結果に終わってしまった。何かが足りなかったのだろう。
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今日、この4年間のサイクルに終止符を打つことを皆に伝えたいと思う。このチームには新しい監督が必要だ。違う文化から生まれる何かをチームに加味してくれる指導者が来た方が、さらなる成長を促せる。選手にとっては新しいことを学び、刺激を受ける。サポーターにとってもフレッシュな監督が来た方がいいだろう」
会長 「監督の意向を尊重する。W杯でこそ良い結果は得られなかったが、この4年間、日本サッカーの進むべき道を作ってくれ、方向性を明確に示してくれたことに感謝している。これをさらに進化させるべく努力していく」
監督 「日本が進むべき道はこれだと確信している。フィジカルで勝負するのではなく、スピードとインテンシティ溢れるサッカーを展開すること。このチームは若いメンバーが多いし、大きく変える必要もない。さらなる成長のためにも、ここでブレずに継続していくことが大切だと思う」
会長 「これで監督と日本サッカーの関係も終わりにするのではなく、今後の日本サッカーへのアドバイスなどがあれば教えて欲しい」
監督 「協会は明確なビジョンを持っているし、それは良いと思う。Jリーグも良い。プレーする選手にとって、技術レベルを上げられるリーグである。さらにその質を高めるには、“戦う”という意味で、もっとバチバチやりあっていいと思う。世界の舞台で戦おうとした時、代表チームではそのシャイな部分が出てしまう。しかし将来性はあるし、必ずもっと強くなってくれると思う。監督の職から離れるが、今後もしっかり日本サッカーを見守っていきたい」
監督の言葉に、心の中で泣いた。
監督が続ける。
「この4年間、本当に素晴らしくて、仕事もやりやすかったし、生活も快適で、何不自由なく過ごせた。家族も日本のことが大好きになった。4年間こうして円滑に仕事ができたのは、大輔のおかげだと思っている。大輔のおかげでイタリア人、日本人スタッフ、選手との関係が滞りないものになったし、それは簡単な作業ではなかった。本当に大輔のおかげで、私はノーストレスで自分の仕事に専念できた」
この部分に関しては、「スタッフも皆団結して、日伊が見事に融合し、素晴らしい共同作業ができた」とだけ訳した。
一瞬で報われた。心の中で泣いた。
スパ・スポーツリゾートの220号室にて、三者面談が終了。2人きりになって、監督が言った。
4年間のサイクルが終わりに近づいていく。日本への帰国を前に、
その日の夕方、ひとりの選手が監督のもとを訪れた……。
つづきは、雑誌「Number」865号でお読みください。
Number Books
19冊にのぼる大学ノートに綴られた1397日間の「通訳日記」。そこには、今まで明かされることのなかったザッケローニ監督の真意や選手たちとの対話が克明に記されていた。日本代表通訳就任からブラジルW杯後のザックジャパン解散まで、世界を驚かせるために挑んだ激闘の日々を完全公開。
