ブラジルW杯通信BACK NUMBER
「自分たち」の前に「自分らしさ」。
ザックの指示を超える主体性を。
posted2014/06/24 10:30
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
Getty Images
ブラジル入りしてから、違和感をぬぐえない言葉がある。
「自分たちのサッカー」である。
コートジボワールに逆転負けを喫したあとも、ギリシャと引き分けたあとも、日本の選手たちは「自分たちのサッカーができなかった」と話した。試合内容に関する分析はそれぞれでも、「なぜ勝てなかったのか」という原因は一点、「自分たちのサッカーができなかった」ことに行き着く。
日本らしいサッカーが、できていないのは間違いない。強みとしてきた左サイドからの崩しは封じ込められ、コンビネーションによる打開も、個人による突破も見られない。
ワンタッチのパスがほとんど使えていないのは、選手同士の距離感が適切でないことを示している。相手守備陣の予測を上回る意外性や即興性が、悲しいくらいに影を潜めてしまっているのだ。
強豪国も、決して理想的な試合をしてはいない。
それでは日本以外のチームは、「自分たちのサッカーができている」のだろうか。否、そうではない。勝点を順調に重ねているチームも、必ずしも理想的な試合をしているわけではない。
グループステージ初戦でスペインを粉砕したオランダは、第2戦でオーストラリアに苦しめられた。20分に先制するものの1分後に追いつかれ、54分にはリードを許している。
それでも、最終的には3-2と試合を引っ繰り返した。途中出場のメンフィスが、ミドルシュートを突き刺した。GKの手前で微妙にバウンドが変わった幸運は、シュートを打ったからこそ呼び込めたものである。