スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
ラキティッチ>セスクである理由。
“エンリケバルサ”が描く未来図。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byTakuya Sugiyama/JMPA
posted2014/06/18 10:30
獲得が確実視されているラキティッチはセビージャで2桁得点&アシストをマーク。W杯開幕戦でも攻守に精度の高いプレーを見せた。
どんな気持ちで2度目の退団を迎えたのか。
「素晴らしい3年間を過ごすことができたバルセロナに感謝したい。このクラブには幼い頃から所属してきた。この素晴らしいチームでプレーする機会を得られた誇りを常に抱き続けたい」
移籍が公表された当日、バルサの公式HPにはセスク本人によるこんな別れの挨拶が掲載されていた。2度目の退団に際し、彼がどのような気持ちでこの文章を綴ったのかは察して余りある。
それにしても、昨季加入したエジルの存在が障害となって「常に第一の選択肢だった」アーセナルへの復帰が叶わず、結果としてチェルシーを移籍先に選んだのも奇妙な巡り合わせだ。これで来季はレアル・マドリー時代にモウリーニョが惚れ込んだエジルがベンゲルの下で、ベンゲルが育て上げたセスクがモウリーニョの下で、しかも同じロンドンでプレーすることになるのだから。
セビージャのラキティッチに立った白羽の矢。
昨夏バイエルンへ引き抜かれたチアゴ・アルカンタラに続いてセスクを放出した今、バルサは来年1月に35歳を迎えるシャビの後継者としてセビージャとクロアチア代表の司令塔、イバン・ラキティッチに白羽の矢を立てた。
同じくクラブが獲得を試みているアトレティコ・マドリーのコケと共に、この人選はルイス・エンリケが描く「シャビ後のバルサ」を展望する上での1つの指標となる。
ラキティッチとコケは、バルサのMFに求められるテクニックやパスセンス、プレービジョンといったポゼッションスタイルの継続に必要な能力に加え、守備時に求められるボディーコンタクトの強さやピッチの幅広い範囲をカバーできる運動量、走力を兼ね備えている。それは近年のバルサの中盤が抱えてきたプレーインテンシティの欠如、プレスの機能不全を改善するために必要な要素に他ならない。