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夏場所まさかの負け越しの遠藤。
10kgの体格差と、増量のリスク。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byNaoya Sanuki/JMPA
posted2014/06/02 10:30
13日目には、15年ぶりとなる平日の満員御礼を記録した。前回は1999年の初場所で、千代大海が大関昇進をかけて初の優勝争いを繰り広げた場所だった。
体重を150kg台に乗せ、後手を踏まないことが重要では。
私としてはとんとん拍子での出世を期待していただけに、2場所連続の負け越しは歯がゆいものがある。夏場所の結果を見る限り、やはり「体重」を増やす必要があると言わざるを得ない。
遠藤の持ち味は、不利な体勢からでも体のしなやかさ(それは美しい四股にも表れている)、技巧で勝ちに持っていけることだが、自分よりもプラス10kgの相手には、それにも限界がある。
現実的には、体重を150kg台に乗せて立ち合いで後手を踏まないことが重要になるのではないか。
しかし、増量にはリスクもともなう。昨今、足にサポーターを巻く力士が多いのは、自分の体重を下半身が支えきれないからだ。
スポーツ界を見渡してみると、「自重」、自分の重さ以上のトレーニングはしない傾向が強くなっている。力士の場合は、自重の範囲を超えている。
遠藤がしなやかさを失わない程度の増量に成功できるかどうか――。
名古屋場所以降の注目点は、そこにあると思っている。