プレミアリーグの時間BACK NUMBER
ベンゲルが9年ぶりのトロフィー獲得。
アーセナル、170億円の補強計画は?
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2014/05/29 10:50
ウェンブリーでのFAカップ決勝後にトロフィーを掲げるベンゲル。久々のタイトルが、長期政権にさらなる安定感をもたらす。
ジルーの決定力はトップレベルにはない。
新FWの獲得も優先課題だ。
ジルー頼みの最前線は、結果的に無理があった。リーグ戦での得点数は16。まずまずの数字だが、アーセナルのエースと呼ぶには心許ない。FAカップ決勝では、バックヒールで巧妙な決勝点アシストを記録しているが、肝心のフィニッシュがいざという時に頼りない。
例えば、事実上リーグ優勝の望みが消滅した3月後半のチェルシー戦(0-6)。開始早々の4分、ジルーはゴール前に抜けたがシュートを蹴り損ねてセーブされる。その1分後、同じようにスルーパスに反応したサミュエル・エトーがセーブ不能な先制ゴールを決めて、敵は大勝への口火を切ることになった。エトーはピークを過ぎた33歳でもフィニッシュの精度は不朽。対するジルーは、ピーク年齢の27歳でも決定力がトップレベルにはない。
話題性ではレアル・マドリーのカリム・ベンゼマや、バイエルンのマリオ・マンジュキッチが魅力的だが、国内にはロイク・レミという獲得候補もいる。今季はレンタル移籍先のニューカッスルで、チャンス供給が限られる環境でありながらリーグ戦14得点。2列目充実のアーセナルであれば、持前のスピードとシュート力が更に活きるはずだ。保有権を持つQPR(来季プレミア復帰)から800万ポンド(約14億円)程度で買い取れる点も、プレミア実績を持つ27歳の魅力だ。
補強ポイントの右SBには、内田篤人の名前も。
他には、マンチェスター・C入りが濃厚とされる右SBバカリ・サニャ、レギュラーの座を求めて去るGKルーカス・ファビアンスキらの穴埋めが少なくとも必要となる。右SBは、センターハーフ兼ウィンガーとしてマンCからの獲得が噂されるジェイムズ・ミルナーがこなせるポジションではある。シャルケの内田篤人の名前も挙がっている。
だが、トゥールーズのセルジュ・オーリエが、サニャと同じくCBとの兼任も可能で適任のように思う。第2GKの後釜には、前回のコラムで今季プレミアのセーブ王として「ベストイレブン控えGK」に選んだ、カーディフ(来季から2部)のデイビッド・マーシャルを推したい。
最終的な新戦力が誰になるにせよ、今夏の移籍市場でベンゲルに求められるのは、FAカップ優勝を実現した采配に通じる積極姿勢。そうすれば来季末のアーセナル指揮官は、僅差の優勝争いをシーズン終了間際に制し、11年ぶりのリーグ優勝後に「最も重要な勝利」と再び口にしているかもしれない。