プロ野球亭日乗BACK NUMBER
“何をしてくるか分からない”巨人。
広島の意表を突いた、圧倒的強さ!
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2013/10/19 12:20
巨人にとってV9以来40年ぶりとなる“2年連続日本一”をかけた日本シリーズにのぞむこととなった原監督。来季の続投も決まり、偉業達成を誓う。
広島ベンチをねじ伏せた、内海の代打交代策。
この回、巨人は1死満塁からロペスの犠飛で1点を上げ、なお2死一、三塁とした。そこで広島・野村謙二郎監督は8番打者の亀井に対して捕手を立たせはしなかったが、明らかなボールを4球続けて歩かせたのだ。
「4回から内海に代打は送ってこない」
そう確信して、当たり前のように選んだ相手監督の策に対して、あえて石井を送り出したわけである。
シリーズ初戦の早い回に相手ベンチの自信を崩す。
そのことによって「何をしてくるか分からない」という疑心を植え付け、相手に嫌な感じを残した采配だった。
結局、この一手で拮抗していたベンチ間の力関係が一気に崩れて、巨人主導の流れが出来上がるわけである。
そしてその勢いを加速させたのが、第2戦の菅野智之の完封勝利だった。
大一番の試合で、大胆なモデルチェンジを果たした菅野。
もちろんこの完封劇は菅野という投手の高いポテンシャルに負う部分が大きい。ただ、もう一つの大きな要素に、この日の巨人バッテリーには、それまであまり使っていなかったフォークを軸にした組み立てという配球の工夫があった。
今季の菅野はレギュラーシーズンで広島と7度対戦して4勝1敗の成績だった。ただ、9月15日の対戦では、この試合と同じ前田健太と投げ合って9安打を浴びて5失点で5回KO。またシーズン終盤には短いイニングで痛打を浴びてマウンドを降りるケースが何度かみられてもいた。
「相手も研究してくるし、それを上回ることができないとプロでは通用しない」
菅野が語るように、得意のスライダーを狙い打たれて投球の幅が狭くなるなど、壁にぶつかっていたのも確かだった。
そこでここ一番のために行なった大胆なモデルチェンジ。
シーズン中は幅をつけるための球種だったフォークを、シーズン終了直後からブルペンで徹底的に磨いて勝負球に仕上げた。そしてそれをこの試合で実戦投入。スライダーとカットボールの割合を大幅に減らして、それまで1試合10球も使わなかったフォークを、全109球中25球と多投した。
データと全く違う配球に、赤ヘル打線は見事に翻弄されたわけである。