オリンピックへの道BACK NUMBER
東京五輪を引き寄せた1つの数字。
五輪での薬物違反者「0」の意味。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byGetty Images
posted2013/09/09 11:45
見事なプレゼンテーションを披露し、日本開催を引き寄せた太田雄貴と滝川クリステル。あとは世界への宣言を実現し、期待に応えるだけだ。
世界陸上で相次いだスター選手のドーピング禍。
プレゼンテーションでも、竹田恒和東京招致委員会理事長が五輪大会でドーピング違反をした日本人が1人もいないことを伝え、「それが政府、国内競技団体などによる長期にわたるアプローチによるものであり、オリンピックの価値の高潔さを守らなくてはいけないということに同意している」と訴えた。
先だっての世界陸上選手権を前に、スーパースターと呼ばれる選手たちに相次いでドーピングが発覚したのは記憶に新しい。陸上にかぎらず、ドーピングが発覚した事例は枚挙にいとまがない。
マドリード、イスタンブールは、ドーピングに関して傷のある立場だった。トルコでは5月にロンドン五輪金メダリストが告発され、先月は31名もの陸上選手がドーピング規定違反で2年間の資格停止処分を受けたばかりだ。スペインはかねてからドーピングに甘い国として批判を受けてきた経緯がある。事実、ブエノスアイレスでの記者会見やプレゼンテーションの質疑応答で両都市にドーピングに関する質問が相次いだ。
反ドーピング運動において日本は世界をリードできる。
スポーツそのものを揺るがす問題であるドーピングをどのように排除していけばよいか、世界のスポーツ界は腐心してきた。根絶に遠く及ばない現実があるのもたしかだが、だからこそ、スポーツ界の課題として重要性は増している。
その中で、日本スポーツ界のクリーンな姿勢は評価を高めてきた。
世界反ドーピング機構初代会長で、現在はIOC委員を務めるディック・パウンド氏(カナダ)が、「(薬物検査において)日本が世界屈指の国であることは事実」(AFP通信)と語ったように、反ドーピング運動の先導役への期待もある。
ドーピングに対する実績は、長年にわたる日本のスポーツ界全体の姿勢と努力、その積み重ねにほかならない。それはまぎれもなく世界に誇るべき美点であり、誘致にこぎつけた要素にもなったのだ。