プレミアリーグの時間BACK NUMBER
マンUで相次ぐ大物獲得の噂――。
2年目香川、トップ下起用の可能性。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byShigeki Yamamoto
posted2013/07/31 10:30
チームには日本での横浜F・マリノス戦前の7月22日から合流し、26日のセレッソ大阪戦で凱旋ゴールを決めた。
今夏の移籍市場が正式に開いてから、ひと月ほど。市場を取り巻く噂の世界では、マンチェスター・ユナイテッド2年目の香川真司が、間接的に渦中の人となっている。まずは、チームメイトであるウェイン・ルーニーの去就問題。昨季末から離脱の噂があるルーニーは、チェルシーへの移籍が濃厚と言われるようになった。マンUの「10番」が抜ければ、トップ下のポジションは香川一人の物になると言われた。
ところが、新監督のデイビッド・モイーズは、バルセロナのセスク・ファブレガス獲得に乗り出した。移籍金40億円弱のオファーが断られると、数日後には40億円台後半を提示と本腰を入れている。元アーセナルの司令塔には、昨季からマンUのエースとなった元チームメイト、ロビン・ファンペルシとのコンビでも実績がある。
時を同じくして、ギャレス・ベイル獲得説も浮上した。トッテナムの看板選手には、レアル・マドリーが入れ込んでいるが、本人はマンUへの国内移籍を望んでいるとの噂も流れた。タッチライン沿いを疾走するイメージが強いベイルも、プレミアの年間最優秀選手となった昨季の活躍は、途中から増えたトップ下起用が奏功したものだ。
加えて、プレシーズン遠征先の日本からは、「望まれるなら、いつかは戻りたい」という香川のドルトムントへの思いが、そしてドイツからは、「現時点でどうこうというわけではないが、いつでも帰ってきてもらいたい」という、ハンス=ヨアヒム・ヴァツケCEOの反応が伝えられると、にわかにUターン説が高まった。両コメントの時期的な曖昧さは無視され、「モイーズに新たな主力流出の悩み」と報道された。『インディペンデント』紙のように、「必要とされている今の内に戻るのが得策」と論じる高級紙まで現れた。
移籍金19億に見合う活躍はまだしていない。
こうした反応は、昨季の香川に対する国内の厳しい見方に起因する。昨季のマンUは、余裕のリーグ優勝を決めたが、香川個人のプレミア1年目は6ゴール4アシスト。怪我もあり、リーグ戦での先発は17試合に留まった。本人も「納得半分、不満半分」とのコメントを出しているが、いずれも、移籍金約19億円の新プレーメイカーとしては淋しい数字だ。
優れた才能の片鱗は窺わせた。スカイスポーツ解説者のガリー・ネビルは、「頭脳的で、スタミナも十分。周囲を生かせる上、彼自身の動きも素晴らしい。ボール捌きが確実で、敵に囲まれても抜け出せる」と、プレミアで見た香川を評している。但し、ネビルは、言わずと知れたマンUのOBで、この香川評はクラブの公式サイトに寄せられたもの。世間で、赤いレンズを通した視点と言われても仕方がない。リバプール主将の過去を持つご意見番、アラン・ハンセンなどは、昨季CL決勝トーナメント一回戦第1レグ後に言っていた。
「対戦相手が、マンUのスタメンに名前がないことを知って喜ぶ選手は、香川ではなくルーニーだ。ピッチ上での存在感と脅威度が違う。香川は、まだ大事な試合で消えてしまう」