青春GOLF ――石川遼に密着! BACK NUMBER
挑戦者から迎え撃つ立場へ──。
石川遼が松山英樹に見せた闘志。
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byKYODO
posted2010/10/28 10:30
初日にはお互いに3アンダーで仲良くホールアウトした石川遼と松山英樹だったが……。日本オープンというメジャー大会だからこそ、余計に石川も闘志をかき立てられたはずだ
挑戦者のつもりで臨みたい。
それは多くのアスリートが、時に王者と呼ばれるような立場の人であっても、試合に対する心構えとして口にする言葉である。それは慢心しがちな自分への戒めでもあるのだろうが、失うもののない強さというのも確かに存在する。
石川遼はこれまでひたすら挑戦者だった。
アマチュアとしてプロに挑み、プロ転向してからは新米プロとして先輩の胸を借り、日本の若きスター選手として海外の強豪に挑んでいった。
そんな石川もいつかは無邪気な挑戦者ではいられなくなる時がくる。守勢に回って、受ける立場に回った時に果たしてどうなるのか。興味深いテストケースが10月の日本オープンで実現した。
ふたたび視界に入ってきたジュニア時代のライバル、松山英樹。
予選ラウンドのペアリングは同学年の松山英樹と一緒になった。ジュニア時代から競い合ってきた松山は高校を卒業して東北福祉大に進学しており、高校在学中にプロ転向した石川とは対照的な道を選んだ選手だ。日本オープン前週に行われたアジアアマチュア選手権で優勝したことで石川よりも早く来年のマスターズ出場権を手に入れ、勢いに乗って大会を迎えていた。
初日、両者はともに3アンダーの4位と好スタートを切る。石川は3年半ぶりに一緒にプレーしたかつてのライバルの成長を実感しつつ、松山のことをたずねる報道陣にこう答えた。
「お互いに燃えるものがありました。松山選手に引っ張られる形でいいプレーができた。この数のギャラリーに囲まれて自然体でプレーできるのはすごいこと。アマチュアとは思えなかったし、うまいとか強いとかでは片づけられないものを見せてもらった。優勝争いに加われる力を持っていると思います。さすがマスターズ出場者だけのことはありますね」
この時はまだ気持ちにも余裕があった。日本オープンの難セッティングでアマチュアが好調を持続するのは難しいだろう、という思いもあったのかもしれない。