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ロッテがCSの新しい戦い方を発明!
「即興野球」で巨人も勝てる?
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byKYODO
posted2010/10/20 11:45
その場しのぎ。
第1ステージの戦いを終え、ロッテの戦い振りは、そう見えなくもなかった。やはり、これが3位チームなのだな、と。
少しでも悪いと思ったら、どんどん投手を交代させる。第1戦はエース成瀬善久が先発したにもかかわらず4人を。第2戦は先発のマーフィーが3回でノックアウトを食らったために、7人の投手をつぎ込んだ。それでいながら、2試合続けて延長の末に奇跡的といってもいいような逆転勝ちを収めた。
だが案外、CSの第1ステージは、そんなアドリブのような投手起用が向いているのかもしれないと思ったものだ。
2戦先勝の超短期決戦。
いったん勢いがどちらかに大きく傾いたら、もう二度と戻ってこない。戻る前にステージが終了してしまう。
勝ちパターンの無さが味方した巨人のアドリブ采配。
それはセ・リーグの第1ステージ、巨人と阪神の戦いの中でも感じられた。
ロッテと同じくシーズン3位ながら連勝で第1ステージを突破した巨人は、第1戦、先発し好投を続けていたエースの東野峻を5回で早々に見切り、6回からシーズン中は先発要員だったゴンザレスを投入。最終的には4人のリレーで逃げ切った。
さらに驚かされたのは第2戦の先発だった。
朝井秀樹である。
シーズン途中に楽天からトレードされてきた決して主戦とは呼べない投手だ。
ひと昔前のように、ともにリーグ優勝チーム同士が争う日本シリーズの舞台であったならば絶対にありえないだろう。ましてや、日本シリーズにおいてはもっとも重要とされる2戦目だ。台所事情が厳しい3位チームならではの起用法だった。
結局、その朝井は1回2失点で降板。ところが、巨人はここから5人の投手をつなぎ、終盤の逆転勝ちを呼び込んだ。
昨年から通じて対巨人戦は7連勝中だった能見篤史や、絶対的な守護神・藤川球児などを擁する阪神とは対照的に、信頼できる投手が少なく、勝ちパターンを持っていないことが采配の可動域を広げ、巨人にいい流れをもたらした。逆に阪神は信頼していたからこそ投手の交代機を逸したとも言えた。