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田中将大、斎藤佑樹、ストラスバーグ。
投球回数に現れる若手育成法の違い。 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph byHideki Sugiyama/Getty Images

posted2010/08/12 10:30

田中将大、斎藤佑樹、ストラスバーグ。投球回数に現れる若手育成法の違い。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama/Getty Images

ストラスバーグはナショナルズとの間でドラフト史上最高額の4年1510万ドル(約13億円)で契約を結んでいる。ちなみに田中は、契約金1億円+出来高・年俸1500万円(全て推定)で楽天入り

投球回数の多さで群を抜く田中は投げすぎかも?

 そして高校から直接プロに進んだ田中の場合、プロ1年目から期待され、しかも実績を残してきただけにストラスバーグ、斎藤と比べると圧倒的に投球回数が多い。もちろん、日本はアメリカと違って先発投手の登板間隔が長く、一概には比較できないのは承知している。

 アメリカでは近年になって、「若手投手の投球回数は前年比およそ2割増まで」という線引きが常識になりつつある。その観点から見ると、田中はプロ1年目にしてはあまりにも投げすぎたのではないか……という不安を持たざるを得ない。

 今年の7月には太ももの裏を痛めて登録抹消されたが、ひょっとするとプロに入ってからの疲労の蓄積もあったのではないかと勘繰りたくもなる。

 参考までに松坂大輔が高校を卒業してからどれくらい西武で投げたかを調べてみた。1、2年目は田中とほぼ同じ投球回数だが、3年目に240イニングを投げているのを見ると、大車輪の活躍をしたことがうかがえる。その反動からか4年目には故障で73.1イニングしか投げられなかった。メジャーに移ってから、信頼できる先発投手の目安とも言われる年間200イニングを超えたのは2007年の一度だけである。

 田中にはぜひとも長く活躍してもらいたいだけに、10代での投球回数が今後、キャリアに響かないことを祈りたい。

“財産”と“選手寿命”のためにも投球回数制限は必要。

 アメリカで投球回数制限が叫ばれるようになったのは、若いときに酷使された投手が早々に引退へ追い込まれるケースが過去多くあったからだともいえる。財産である選手を長持ちさせたいという球団側の思いと、長く現役を続けたいという選手側の思いが一致したということでもある。

 しかし日本では、まだまだ投球回数制限や連投に対する意識がアメリカに比べると低い。そうした「評価基準」がないからだろう。

 アメリカでは、酷使傾向を持つ監督は批判の対象だ。批評があって、現場が動いたのである。

 日本でもそうした視点があってもいいのではないか――それが一流選手を長い間楽しめることにつながると思い、このコラムに気持ちを託してみた。

 いつか、斎藤や田中がワールド・ベースボール・クラシックなどの大会でストラスバーグと対戦する日が来るかもしれない。その時、3人が健やかな状態で投げ合うことを祈ってやまない。

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