ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
プロ3戦目で賞金王候補の松山英樹。
青木功、藤田寛之も認めた真の実力。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byNIKKAN SPORTS/AFLO
posted2013/05/08 10:30
中日クラウンズ優勝をあと一歩で逃した松山は世界ランク90位に。米ツアーで頑張る石川はその活躍ぶりに「いつかこっち(アメリカ)の大会に出るチャンスがあればぜひ来てほしい。どこの舞台でもいいので優勝争いを一緒にしたいので」とコメントしている。
素っ気ないマスコミ対応に松山の戸惑いが見え隠れする。
ところで、松山の開幕3試合で浮き彫りになったのは高いゴルフの潜在能力だけではない。一方で、ラウンド後の報道陣とのやり取りが、どうもスッキリと終われていない。あどけない、ぎこちない回答が続くというのではなく、胸の内を悟られまい、早くその場を切り上げたい、そんな思いが硬直させた表情から見え隠れする。
ラウンド後、インタビューに毎日引っ張り出され、周囲の興がるばかりの目が集まれば、誰しも辟易としてしまうもの。もちろんシャイでリップサービスなどができるタイプではなく、無理に雄弁であることは求められていない。逆にそんな朴訥な姿も好感を呼んでいたのだから。
しかし、昨年やそれ以前、数カ月前のアマチュア時代は、重厚な鎧を自分に着せるようなタイプでなかったことも周囲は知っている。
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焦る必要もないが、プロスポーツマンとしては、こちらも大いなる伸びしろだ。
プロデビューは「世界」の大舞台へ飛躍するステップだ。
アマで1勝、そしてプロで1勝。快挙の瞬間も、そして国内ツアーで敗れた瞬間も、彼はいつも凛とした顔立ちだった。けれど最終日に大崩れした昨年4月のマスターズ、3年連続のオーガスタ行きを阻まれた同11月のアジアパシフィックアマチュア選手権では、悔し涙をこらえられなかった。そして今年2月、全英オープンの出場権をつかんだアジア予選会では、今度は嬉し泣きした。
煮えたぎるような熱いものも、人並み以上に胸にある――。
「世界」の入口に向き合った時こそ、松山のハートの鼓動は速く、大きくなり、涙腺も緩ませる。無感動といった雑多な言葉で処理されるような若者ではない。
ただ少しだけ、他の選手よりも視線の先が高くセットされている、紛れもない原石なのだ。