Jリーグ観察記BACK NUMBER
Jリーグの選手は過保護なのか?
西村W杯審判員が伝えた意外な事実。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byNaoki Nakanishi/JMPA
posted2010/07/29 10:30
南アW杯で活躍した岡田ジャパンの選手たちは、屈強な相手選手の当たりにも倒れず戦えたように見えた。変えるべきはJリーグでの気持ちなのか身体なのか?
Jリーグのレベルを上げるには、まずレフェリーのレベルを上げなければいけない――。よく国内メディアで語られることだ。日本にはJリーグのレフェリーの実力を低く見る傾向があり、実は筆者もそのひとりだった。
だが、それは偏見なのかもしれない。
南アフリカW杯において、西村雄一主審と相楽亨副審が準々決勝のオランダ対ブラジルを含め4試合を担当したことで、日本人レフェリーが国際舞台で高く評価されていることが明らかになった。
前大会のドイツW杯において、上川徹主審が3位決定戦のドイツ対ポルトガルで笛を吹いたのに続き、西村主審がオランダ対ブラジルというどんなベテランレフェリーでも緊張するであろう試合で抜擢された。加えて決勝戦では、第4審判としてイングランド人のウェッブ主審の判定を支えた。もはやステレオタイプに、日本人レフェリーはレベルが低いと言うべきではないだろう。
Jリーグでは審判が安易にファウルを取りすぎるのでは?
しかし、それでも、個人的に納得できないことがあった。
Jリーグの判定でよく問題視されるのは、フィジカルコンタクトがあったときに、ファウルを簡単に取りすぎるということだ。FWが背後からDFに体を寄せられて倒れると、すぐに「ピィッー」と笛を吹かれ、そのためDFは体を寄せる力をセーブしなければいけなく、球際での激しさが少ないリーグになっている。
ドイツ人のトーマス・クロート代理人は、「Jリーガーの一番の課題は、局面でのアグレッシブさだ」と指摘する。その問題の根っこにあるのは、日本人レフェリーのナイーブな笛――筆者はそう考えていた。
西村主審がW杯で高く評価されたのだとしたら、きっとJリーグとは違う基準で笛を吹いたに違いない。スペイン対オランダの決勝戦の前日、レフェリーのトレーニングが公開され、直接質問をぶつける機会を得た。
ところが、西村主審の返答は、予想とはまったく異なるものだった。
「W杯では、普段のJリーグとまったく同じ基準で笛を吹きました。W杯だからといって、フィジカルコンタクトに対して基準を甘くするということはなかったです」