オリンピックへの道BACK NUMBER
競泳界のエースは北京の蹉跌を胸に。
入江陵介と古賀淳也が五輪再挑戦。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byTakao Fujita
posted2010/07/22 10:30
今月から日本オリンピック協会(JOC)のシンボルアスリートとなった入江陵介と古賀淳也。2人は14日、パンパシフィック選手権の高知合宿のため、アメリカ・アリゾナへ旅立った
失意の古賀を再起させたトレーナーの言葉とは?
日が過ぎても気力を取り戻す様子のない古賀に、ある日、スポーツトレーナーが諭した。
「そんなことでは、何をやってもだめだ」
すると古賀は一変した。意欲を失っているかのように見えて、実は再起への志は充満していたのかもしれない。ともかく、絶妙なタイミングでかけられた言葉が契機となったのだ。自分のありかたを反省し、それまでの競技人生の甘さも痛感した。練習への姿勢はさまがわりし、教えを乞うために多くのコーチのもとを訪ねて歩いた。
「挨拶、礼儀が大切なんだ、そこからやりなおそう」とも考えるようになった。
明けて'09年の日本選手権100mで初優勝し、昨年7月の世界選手権の同種目では金メダルを獲得する。1年前からすれば想像できない活躍だった。
印象深かったのは、金メダルを得たにもかかわらず、古賀は喜びを露わにしなかったことだ。
「一緒に泳いだ選手たちに失礼になりますから」
その言葉も、心の成長を示すものであった。
パンパシフィック選手権が8月18日に開幕することもあって、2人は今、強化に余念がない。世界規模の大会ではないが、アメリカやオーストラリアなどの強豪が参加するだけに、五輪中間年である今シーズン、世界での位置を再確認する絶好の機会である。
そして、今も忘れないという'08年の悔しさを糧に、本当の勝負の場である2年後のロンドン五輪を見据えている。