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地味だが常連、そしてキーマン?
高橋秀人、ザックジャパンでの重要性。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byAFLO
posted2013/03/15 11:00
遠藤保仁と長谷部誠でほぼ固定されているボランチで、出場機会を与えられ続けていることには、バックアッパーとしてのテスト以上の意味がある。
ザッケローニは高橋に一体何を期待しているのか?
試合は柏が堅守速攻型の“らしい”展開で2-1と勝利したが、結果はさておき、高橋秀人という選手のことが気になって仕方がなかった。当時の取材ノートを開いてみると、こんな感想が書き留められている。
「F東の高橋、かなりいい。名古屋の中村直志みたい。センス抜群。五輪代表に入ってないのはなぜ?」
高橋に関する知識は皆無に等しく、初めて見た高橋の印象は必要以上にポジティブなものだった。だからロンドン五輪に出場できるほど若くないことを知って、必要以上にがっかりした。
あれから1年が経過した今、あくまでベンチ要員とはいえ、高橋は日本代表の常連となった。レギュラーを固定したチームで4試合のピッチに立っていることから、今のところ、高橋の序列はサブ組の中でも比較的高い位置にあると見ていいだろう。
では、ザッケローニは高橋に何を期待しているのか。
他のメンバーと比較してやや地味な存在とも言える高橋が、日本代表に名を連ね続けるのはなぜか。その現在地を確認すべく、視界の中心に高橋を据えて3月9日の柏戦を観た。
鋭い出足、絶妙なポジション取り、高度な戦術眼……。
やはり、相変わらず守備時のポジショニングとアクションの速さは抜群だった。
その最たる例として挙げられるのが、28分に生まれたFC東京の2点目につながったプレーである。
スローインからのルーズボールに対するファーストアクションを起こしたのはボランチでコンビを組む米本拓司。こぼれ球の落下点を察知した高橋は鋭い出足でルーズボールを拾い、トップスピードのドリブルをペースダウンさせながら左サイドに展開する。自らはそのままの勢いで縦へのフリーランニングを仕掛け、タッチライン際でボールを受けた左サイドバックの太田宏介が仕掛けの態勢に入った時点でスッと下がって後方をサポート。一対一の局面を制した太田のクロスは、渡邉千真のこの日2点目のゴールを生んだ。
33分には相手3人のパスワークをタッチライン際に追い込んで5人で囲み、苦し紛れの横パスを出させて高橋がインターセプト。ルーズボールを味方が拾ったことを確認すると、高橋はすぐさまバックステップでポジショニングを修正しながらパスの“逃げ道”を作った。結局、この攻撃は柏の守備に阻まれたが、出足の鋭さでボールを奪い、守備から攻撃へと切り替える一連の動作は見事だった。