リーガ・エスパニョーラ最前線BACK NUMBER
ビラノバが電話とチャットで指揮!?
バルサの深刻な危機にある裏事情。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byGetty Images
posted2013/03/08 10:31
チーム不調の中にあってもメッシは「こういった事態には慣れていないが、仲間たちと一緒に抜け出せると信じている」とコメント。ビラノバ監督も3月中に復帰と噂されているが……。
戦術面の準備不足にも現れる“遠隔操作”の限界。
だが、このやり方には穴がある。テレビで観るにしろインターネット上で観るにしろ、カメラを通じて得られる情報には限りがあるし、タイムラグも生じるからだ。そもそも、自身命を賭けて病気と闘っているビラノバが、日々どれだけの力をチームに注げるのかも疑問である。
試合の準備にしても完璧とは言いがたい。選手の状態は日々ロウラから報告を受けているし、対戦相手のデータも毎回届いているはずだが、ミラン戦やマドリー戦では戦術の不備が感じられた。敵の守備固めは予想できたはずなのに、バルサの出方はいつもと同じ。重要な試合ではメッシのポジションを変えたり、アウベスの使い方を工夫したり、最終ラインを3人にしたり、ミッドフィールダーを7人同時に起用するなどしてきたグアルディオラを引き合いに出し、特別な対策を打ち立てなかったことを今回の連敗の原因に挙げたジャーナリストは多い。
監督の不在は選手たちから緊張感と必死さを奪った。
さらに重要なのは選手のメンタル面への影響だ。
1月、ビラノバのニューヨーク行きを知った選手たちはロウラと協力して監督の留守を守ることを決めたが、その後、試合で使われるメンバーがほぼ固定され、ゲームプランに変化がなくなると、練習において気の緩みが生じ始めたという。
また、そんな精神状態はバルササッカーの肝であるプレッシングにネガティブに働いた。「ボールを奪われた直後の6秒間は死ぬ気で取り戻しに行け」と言ったのはグアルディオラだが、緊張感と必死の思いを無くした選手が仕掛けるプレスは、ミラン戦でもマドリー戦でも全く機能していなかった。
「バルサが他のチームと違うのは、失ったボールに前線の選手がすぐプレスをかけるところだけれど、それには『絶対に取り戻す』という気持ちがなければダメ。士気が下がっているときは、取りに行っても逃げられると思ってしまう。マドリー戦でのバルサはまさにそうだった」
現役時代セビージャのCBとして活躍したホセ・ミゲル・プリエトは、コメンテーターを務めるラジオ番組でこう語っている。