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トヨタが技術協力したフェラーリ!?
新型F1マシンに見えた王国の復権。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2013/02/07 10:30
スペイン・へレスでのウインターテストに臨む、フェリペ・マッサとフェラーリの新型車F138。ノーズのデザインに段差が無く、例年になく美しいデザインのシルエットとなっている。
老朽化した自社施設を見切り、他社の助力を仰ぐことに。
2013年のセレモニーも、フェラーリの伝統に則って、すべてが進行した。しかし、発表会以外の部分では、フェラーリは勝つためにいくつかの改革を断行している。そのひとつが風洞施設の使用方法だ。
'90年代後半から'00年代前半にかけて、フェラーリの躍進を支えたのは当時、高性能を誇っていた風洞施設だった。ライバルたちがエンジンの馬力競争を繰り広げる中、フェラーリはいち早く洗練されたエアロダイナミクスの開発に乗り出し、F1界をリードしていった。
しかし、時は流れ、フェラーリが所有していた風洞施設は老朽化し、ライバルたちが最新の風洞施設を建設し始めると、フェラーリが持っていたアドバンテージは徐々に消えていった。そして、昨年フェラーリは大きな決断を下す。
それは、自社の風洞施設を一度止め、他社の風洞施設を借りて実験をやり直すというものだった。
トヨタの助力を得た最新マシンの性能に会長はご満悦。
その他社とは、'09年までF1を戦っていたトヨタである。
トヨタの風洞施設を借りて実験した結果、自分たちの施設で得たデータに誤差があることが判明したフェラーリは、新しい風洞施設を建設することを決断。その間、トヨタの風洞施設で開発し続けることにしたのである。
新車F138は、トヨタの風洞施設の技術を用いて作られた最初のフェラーリF1マシン。そのマシンを発表会前日に見たモンテゼモロは、昨年課題だった空力エリアに改善が施されていることを確認して、満足していたという。
朝、マラネロを覆っていた霧は、発表会が終了する昼前には消えた。モンテゼモロは笑顔で言った。「いい発表会だった」と。