南ア・ワールドカップ通信BACK NUMBER

優勝候補がまさかの敗北!
世界に広まるスペイン封じの処方箋。 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

PROFILE

photograph byFIFA via Getty Images

posted2010/06/17 11:30

優勝候補がまさかの敗北!世界に広まるスペイン封じの処方箋。<Number Web> photograph by FIFA via Getty Images

 もはや“スペイン流”パスサッカーへの処方箋は、全世界に広まってしまったのかもしれない。

 今大会において、欧州王者のスペインは、ブラジルとともに優勝候補の筆頭にあげられていた。スペインはまるで手で扱うかのようにパスをまわし、密集地帯でも崩すことができる。これを「ハンドボール・サッカー」と呼ぶ人もいるし、ミスが少ないことから「パーフェクトフットボール」とも呼ぶ人もいる。とにかく、これでもかというほど、パスをつなぐのが特徴だ。

 しかし、そのスペインが、H組の初戦で、スイスにまさかの敗北を喫してしまった。

ADVERTISEMENT

 ほぼ完全にゲームを支配しながらも、カウンターからゴールを決められて0-1。シュート数はスペインが24本に対し、スイスが8本のみ。内容面ではスペインが優っていたのだが……。

名将ヒッツフェルトの実にシンプルなスペイン対策。

 いったいどうやってスイスは、“無敵艦隊”の攻撃を封じたのだろうか?

 スイス代表のヒッツフェルト監督は、こう説明する。

「スイス代表は105年間の歴史の中で、一度もスペインに勝ったことがない。だから、今日の結果にとても満足している。スペイン戦では、徹底的にコンパクトさを保ち続けたのがうまくいった理由だ」

 ヒッツフェルトは、かつてドルトムントとバイエルンをチャンピオンズリーグ優勝に導いたドイツサッカー界の名将だ。攻撃に派手さはないが、守備に穴のないチームを作るのがうまい。

 ヒッツフェルトのスペイン対策は、実にシンプルだった。

 4人のDFと4人のMFが、平行に並んで2本の列を作る。そして、2列が一定の距離を保って、ゴール前に守備ブロックを作るというやり方だ。そしてFW2人が、カウンターを狙い続ける。

 しかし、ただ単純に守備ブロックを作っただけでは、スペインを抑えられない。

 本当にスペインを抑えるためには、2つのポイントがあった。

【次ページ】 スペインの“罠”を免れた「待ち伏せ」の守備。

1 2 NEXT
#オットマー・ヒッツフェルト
#南アフリカW杯
#ワールドカップ

海外サッカーの前後の記事

ページトップ