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優勝候補がまさかの敗北!
世界に広まるスペイン封じの処方箋。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byFIFA via Getty Images
posted2010/06/17 11:30
スペインの“罠”を免れた「待ち伏せ」の守備。
1つ目は、ボール保持者へのアプローチの仕方だ。
相手が目の前でボールを触っていると、つい足を出して取りたくなってしまうものだ。だが、それはスペイン側の“罠”でもある。
奪おうと足を出して抜かれたら、せっかくの守備ブロックに穴が開いてしまう。ボール奪取への色気は出さず、「待ち伏せ」の守備をしなければいけない。
2つ目のポイントは、相手からボールを奪った直後に関係している。
スペインというのは、相手陣内でボールを失うと、すぐに取り返そうとして、群がるようにプレスをかける傾向がある。そこでボールを奪い返せば、相手ゴールに近い分、ビッグチャンスになりやすいからだ。
スイスの選手たちはボールを奪ったあと、スペインが奪い返しに来ることをわかっているかのように、着実にパスをつないだ。そのおかげで、ゴール前近くでボールを失うような場面はほとんどなく、相手の得意パターンを防ぐことができた。
ヒントはCLを制したモウリーニョのやり方にあった?
実はこのやり方は、ヒッツフェルトのオリジナルではない。
すでにインテルのモウリーニョ監督は、昨季のチャンピオンズリーグにおいて、ほぼ同じやり方を実行していた。
待ち伏せしてボールを奪い、素早くカウンターを仕掛ける。モウリーニョは準決勝でバルセロナを破り、決勝ではバイエルンを下して優勝した。おそらくヒッツフェルトはモウリーニョのやり方に、何かしらのヒントを得たのではないだろうか。
冒頭で書いたように、もし“スペイン流”パスサッカーへの処方箋が広まっているのなら、チリやホンジュラスに足をすくわれてもおかしくない。今大会でスペインは、想像以上に苦戦することになりそうだ。