フェアウェイの舞台裏BACK NUMBER
日本でプロ転向より海外に飛び出せ!
“世界を知った”松山英樹が歩む道。
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byAFLO
posted2012/09/12 10:30
今年6月には全英オープンの出場権を賭けミズノオープンに参戦するも、トータル4アンダー、43位タイに終わった。
結果は予選落ちの惨敗も“大成功”だった理由とは?
試合では全米オープン仕様(全米アマは全米オープンと同じUSGAの主催試合)の容赦ないラフにのみこまれ、松山は64人によるマッチプレーにも残れずに2日間で予選落ちした。狙っていたはずのマスターズ切符にはまるで届かず、結果だけを見れば惨敗だった。
だが、それでも今回の挑戦は大成功だった。全米アマの翌週、埼玉・狭山GCで行われた日本学生選手権で松山の意識の変化がはっきりと見えたからである。
初日から首位に立っているのに松山の表情はずっとすっきりしないままだった。2日目で早くも2位に4打差をつけた時でも愚痴をこぼしてばかりだったのだ。
日本でも、全米アマでの経験を思い浮かべ、危機感を募らせる。
「パターが全然入らなくて、きのうよりひどいラウンドだった。こんな調子だから全米アマは予選落ちしたわけで。日本の中ではトップでも……」
一見、鼻持ちならないセリフだが、全く嫌みな響きはない。むしろ、あぁ、俺ってなんでこんなに下手なんだろう。そんな落胆がひしひしと伝わってきたコメントだった。松山は頭の中に全米アマで戦った選手たちを思い浮かべ、「あいつらがこの試合にいたら……」と危機感を抱いていた。
「あれだけレベルの高い全米アマのコースで、トップの選手が出した2日間9アンダーというスコアは、いくら頑張っても自分には出せそうもない感じがした(松山は4オーバーで予選落ち)。海外の選手と比べたら、この大会でも自分はもっともっとスコアを伸ばしていかないと」
同世代のアマ選手に見せつけられた世界の壁という現実。
これまでにも米ツアーのソニー・オープンやマスターズに出場してきたのだから、世界の壁の高さは肌で感じてきたはずだ。しかし、それは10歳以上も年の離れたプロたちもいる世界の話。力の差はあっても当然と割り切れる。
だが、全米アマで顔を合わせたのは、ほとんどが同世代の、まだプロにもなっていない選手たちだ。言い訳のしようがなかった。
「ショックというよりは……、あれが向こうのレベルなんだな、やっぱり高いんだなって思いました」
鼻っ柱を折られたというのではなく、ぼんやり想像していた現実をはっきりと突きつけられたということだろう。
「こんなもんス。自分はこんなもんス」
日本の大学生No.1を決める大会でダントツの首位に立っているのに、もどかしそうに首を振る松山。そんな姿にこちらはむしろ頼もしさを覚えるのだった。