ダルビッシュがレンジャーズに見出された経緯とは？

　私がテキサス・レンジャーズに戻った'08年当時、クラブのゼネラルマネージャーを務めるジョン・ダニエルズと彼のスタッフは、アジア地区のスカウティングにもっと力を注ぐ必要があるという結論にすでに達していた。そこで彼らは環太平洋スカウトとしてジム・コルボーンを雇い、アジアにおける選手発掘を管轄させた。彼らが掲げた目標は、最低でも1年に1人のアジア人選手と契約するというものだった。

　我々のスタッフが、ユウが特別な才能の持ち主だということを見抜くまで、時間はかからなかった。そこで我々は、ユウがポスティングにかけられるようなことがあった場合に契約を結べるような位置につけるため、5年計画に着手したんだ。

「我々はマーケティングのためにユウと契約したのではない」

　ユウの魅力は「日本人ピッチャー」である点ではない。我々が彼に惹かれたのは、MLBですぐに戦えるどころか、ローテーションの主軸を務めるピッチャーに相応しい才能を持っている点だった。

　我々はユウとの契約を、マーケティングのためのものとしても捉えていなかった。確かにマーケティングの効果も得られれば素晴らしいだろう。だが我々はあくまでも、最高のピッチャーと契約したんだ。

　MLBでは、速いストレートを投げられることが、ピッチャーの最も重要な武器になる。ユウが投げるボールは、ビッグ・リーグの正統な系譜に連なる速球だ。さらに彼は先発を重ねるごとに、真っ直ぐの操り方が少しずつうまくなっている。

　ピッチャーにとって大事なのは、バッターに対して優位に立つこと。それに尽きる。逆に劣勢に立たされれば、本当に苦しい状況に追い込まれてしまう。ユウはノモと同じく、初球でストライクを取る方法を知っている。それだけじゃない。バッターのバランスを崩し、彼らを仕留めるための鋭い変化球をいくつも操れる。だから対戦を重ねても、打者に対して優位に立ち続けることができるんだ。

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