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<忘れられない瞬間を> フェデラー 「悲願の生涯グランドスラムを達成」~2009年6月7日:全仏オープン~
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byAFLO
posted2012/05/24 06:00
優勝が決まった瞬間、赤土に崩れ落ちるフェデラー。スタンドの観客も歴史的瞬間に歓喜し、彼の偉業を讃えた。
隣国スイス出身の元王者に送られた大声援。
この大会、観客は明らかにフェデラーびいきだった。彼らは、隣国スイスに生まれ、フランス語を操る元王者に大記録を達成させようと「アレ(行け)! ロジャー」と大声を張り上げた。その親身の応援について、フェデラーはこう語っている。
「本当に力になっている。みんな、その瞬間を待っているんだと思うよ。僕が奇跡を起こす瞬間をね」
決勝の相手は、ナダルではなかった。4回戦でナダルを破ったロビン・セーデリングがそのまま決勝に勝ち上がったのだ。大会史に残る番狂わせで勢いづく24歳だったが、四大大会決勝の舞台は初めてで、硬さが目立った。一方、フェデラーは早いタイミングで捕らえるフォアハンド、相手を翻弄するようなドロップショットと、コート上の時間と空間を支配した。試合は6-1、7-6、6-4のストレートで決着した。
30歳の今も、BIG4の一角として存在感を示すフェデラー。
コートに崩れ落ちたフェデラーを大歓声が包んだ。表彰式でスイス国歌が流れる中、フェデラーは静かに涙を流し、四大大会全制覇の感激をかみしめた。
フェデラーはこの年の7月に世界ランク1位に返り咲くと、翌年5月までその地位を守り、限界説を封じた。30歳の今も、BIG4の一角として存在感を示している。今年の全仏は、本命ジョコビッチ、対抗ナダルというのが大方の見方だが、フェデラーも黙ってはいないだろう。昨年は、シーズン開幕から39連勝と絶好調のジョコビッチを準決勝で破っている。今回も優勝争いのカギを握る存在であることは間違いない。