日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
ウズベク戦でスタンドも茫然の敗北。
日本代表から消えてしまった“迫力”。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2012/03/01 12:00
「もっと我慢して前に入っていっても良かった」「トップ下でやりたいが、周りとの連係は今ひとつだった。ドルトムントとはまったく別物」と反省の言葉を並べ続けた香川真司。主将の長谷部誠は、ドイツのクラブに所属する選手たちだけでも5月に追加合宿をやりたいとの考えを示している
豊田スタジアムは重苦しい空気に支配されていた。
0-1で試合が終わると満員のスタンドは静まり返った。ブーイングも起こらない。どう反応していいかサポーターも戸惑っているように見えた。
両チームとも既にW杯アジア最終予選進出を決めていて、日本代表にとってはスタンドから後押しを受けるホームでの一戦。ベストメンバーをそろえた日本に対して、ウズベキスタンはジェパロフ、ゲインリフ、シャツキフら攻撃の要がいない。「負けてはならない」という気持ちよりも、「負けるわけがない」という心の隙が出てしまっていたのではないか。
キャプテンの長谷部誠は厳しい顔つきで言った。
「この負けを結果として受け止めなければならない。3次予選で2敗してしまったということは、自分たちもまだまだという弱さを今は感じている」
「弱さ」という言葉は「甘さ」にも置き換えられるだろうか。
「ゴール前ではもう少し迫力を持って向かっていかないと」
ゲームを支配したのは間違いなく日本だった。
昨年9月のアウェーゲームでは前半、ウズベキスタンに主導権を握られて苦戦したが、今回はスタートから日本が主導権を握った。しかしあれだけゴールにこだわっていたチームが、この日ばかりは縦に、ゴールに向かわない。詰めも甘い。
試合後に配られたマッチレポートを見れば、一目瞭然だった。ボール支配率は日本が55%。多くチャンスをつくっていたのにもかかわらず、シュートは前半5本、後半1本の計6本に終わった。カウンターのみで攻撃してきたウズベキスタンは10本。どちらがゴールを強く意識していたかは、言うまでもあるまい。
アルベルト・ザッケローニは、試合後の会見で攻撃について不満をこう口にした。
「バイタルエリア(最終ラインとボランチの間)で前を向いたときにゴール前ではもう少し迫力を持って向かっていかないといけない。ミドルシュートも欲しかった。常に相手がペナルティーエリアのなかに入れてくれるわけではないので、エリアの外から打つというチョイスもあったはず。そういう意識も希薄だった」
指揮官のこの発言は、トップ下で起用した香川真司に主に向けられていた。