プロ野球亭日乗BACK NUMBER
ビッグネーム獲得で若手が育つ?
巨人、大型補強の真の狙いとは。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKYODO
posted2012/02/19 08:01
即戦力・村田修一のFA加入で、生え抜きである大田泰示の思い切った起用が可能となった。FAと若手育成を組み合わせることでより一層の戦力補強が実現するのである
極度の不振に喘いでも「育成」のために起用し続けた。
だが、そのシーズンの成績は決してレギュラーとしては満足いくものではなかった。開幕直後の3月から4月にかけては打率2割8分4厘と合格点だったが、5月には1割7分7厘と急降下、6月は少し戻したものの2割3分1厘と低打率にあえいだ。
言うなれば、いつ先発を外されてもいい状態だったのだ。
それでもこの年は小笠原道大内野手とアレックス・ラミレス外野手の3、4番が絶好調で阿部慎之助捕手もケガなく130試合近く出場、木村拓也内野手や谷佳知外野手などの脇役陣も充実していたために、チームとしての得点能力が高かった。
だから坂本が不振を極めても、育成というテーマのもとに原監督は「8番、ショート」で使い続けることができた。その結果、2年目で全試合出場を果たし、その経験が3年目の打率3割6厘という結果につながるわけである。
その育ってきた背景が、原監督の言う「みんなが守ってできたこと」という理由だった。
若手を育てる土台作りにFA補強が必要と原監督は言う。
「FAで選手を補強すると若手が育たないという考えがあるけど、むしろ実際は逆なんだと思う」
こうした経験をもとに原監督は言う。
「選手を育てるには、まず素材を獲ってくること。そして本人の努力。それとその選手を育てられるチーム環境を作ることも大きな要素になるんです。そのためにはFAを含めた補強も必要になる。そういう補強こそが、本当の意味でチームを強くする補強なんです」
昨年は小笠原のケガ、ラミレスの不振などに加えて、補強ポイントだった三塁手にFAだった横浜の村田修一内野手ではなくラスティ・ライアル内野手を獲得したが、この補強の失敗が最後まで響いた。結局、遊撃を除く内野の3つのポジションを固定できないままに戦わざるを得ずに、結果として100通りを越すオーダーを編成する異常事態を招いたわけだ。
「優勝争いをする中で、極端に言えば1番から8番までその日、その日のベストメンバーを組んで、何とか凌いでいく。去年のチームではそういう戦い方しかできなかったのが実情だった」
補強から育成中心のチーム作りを目指しながら、むしろ逆の結果を招くことになってしまったのだ。