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覇権争いが激化必至の今年のF1界。
ピット内外で勃発する5つの戦い。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byHiroshi Kaneko
posted2012/01/10 10:30
2012年も圧倒的に有利との前評判がある王者セバスチャン・ベッテル。「しかし、このスポーツの良いところは、毎年シーズン開幕前にはドライバー全員が同じ条件に戻るところだよ」と発言している
F1の世界には、こんな言葉がある。
「日曜日の午後2時間だけがF1ではない。なぜなら、F1はスポーツであると同時に、政治でもあり、そして経済の戦いでもある。日曜日の午後の2時間以外にも、F1はさまざまな戦いを日々、演じている」
つまり、F1を観戦するときは、だれがレースで勝つのかというスポーツ的な側面だけを追うのではなく、チーム同士の政治的な駆け引きや、F1開催を巡る経済的な動向など、競技以外の分野にも関心を寄せながら見たほうが、一層楽しめるというわけだ。
そこで、今回は2012年シーズンのF1を観戦していく上で、F1のスポーツ・政治・経済など、すべての分野の中から、注目すべき5つの戦いをピックアップしてみた。
バトル1――史上最年少3冠、そして名王者を賭けた戦い。
'10年に、ハミルトンが保持していた記録を更新して23歳134日という史上最年少記録でチャンピオンに輝いたベッテルは、'11年も連覇に成功。これにより、'06年にアロンソが樹立した史上最年少での2連覇という記録も更新した。もちろん、今年もチャンピオンとなれば、史上最年少での3連覇となる。F1で3回以上タイトルを獲得したのは、ファン・マヌエル・ファンジオ(1951年、'54~'57年)、ジャック・ブラバム('59~'60年、'66年)、ジャッキー・スチュワート('69年、'71年、'73年)、ニキ・ラウダ('75年、'77年、'84年)、ネルソン・ピケ('81年、'83年、'87年)、アラン・プロスト('85~'86年、'89年、'93年)、アイルトン・セナ('88年、'90~'91年)、ミハエル・シューマッハー('94~'95年、'00~'04年)の8人だけ。'12年のタイトル争いは、偉大な名王者がまたひとり新たに誕生するかどうかという重要なシリーズとなることだろう。
バトル2――トップチームのシートを巡る戦い。
ほかのスポーツなら、優勝したければトレーニングを積むというのが成功への道につながるのだろうが、F1では勝てるチームに行くことが勝利への近道となる。現在のF1で勝てるチームとはレッドブル、マクラーレン、フェラーリである。その3チームに所属する3人のドライバーの契約が'12年限りとなっているため、今シーズンはシーズン途中からシート争いが激しく繰り広げられるだろうと予想されている。
3人のドライバーとは、ウェバー(レッドブル)、ハミルトン(マクラーレン)、マッサ(フェラーリ)である。そして、この3人の中で、もっとも注目を浴びているのが'08年のチャンピオンであるハミルトンだ。マクラーレン残留はもちろんのこと、チャンピオンチームであるレッドブルへの移籍も十分考えられるだけでなく、アロンソとの関係も徐々に改善しており、フェラーリ入りの可能性もある。'12年はコース上での走りだけでなく、コース外でもハミルトンの一挙手一投足に注目したい。