ロンドン五輪代表、最大の挑戦BACK NUMBER
A代表に選手をとられたU-22代表。
穴を埋める新たな救世主はいるのか?
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/10/24 10:31
2005年の第1回世界幼少年サッカー大会で優勝、2009年のU-17W杯では10番のユニフォームで世代を代表するエースとして戦っていた柴崎岳。同世代が海外の有名クラブへ移る一方、自らは今季は右足を骨折するなど、悔しい想いは人一倍あるはずだ
チームのバランスよりも持ち味のアピールが優先では?
柴崎は「全体のバランスを考えてプレーしました」と言っていたが、それはレギュラーになってから考えればいいことだ。サバイバルレースの渦中にいる選手がチーム戦術を慮る必要はなく、少々、戦術を無視しても自分の持ち味をもっと出すべきではないだろうか。そうしなければ、短期間の合宿で自分を強く印象付けることはできない。
金崎も自分の良さを活かして、もっと積極的に仕掛けて行けばいいのだが、なんとなく淡泊で、彼の持ち味である「恐さ」がほとんど感じられなかった。そのことを金崎自身も感じていたのか、試合後、「東との距離感とか、今日は、こうした方がいいんだっていうのが分かったことが収穫。それだけです」と、硬い表情のまま、バスに乗り込んだ。
マレーシア戦で見せた全員守備の意識は雲散霧消してしまった……。
また、チームの大きな課題も露出した。
このチームは、もともと流れが悪くなった時、そのまま失点してしまう悪癖があった。だが、最終予選の初戦マレーシア戦では、流れが悪くなっても全員が守備の意識を高く持ち、お互いをフォローし合うなどして失点を防いでいたのだ。その試合後、GK権田修一は、「流れが悪くなった時、全員で耐えられるようになったところにチームの成長を感じました」と、誇らし気に語ったが、その献身的な守備こそがこのチームの強さであり、軸になったはずだった。
ところが町田戦では、前半10分過ぎから流れが悪くなり、32分にミスから簡単に失点した。マレーシア戦で出来ていたことが、僅か1カ月であやふやになり、チームの軸が未だに不安定であることを露呈してしまっていた。
東慶悟は、「今日のことは心配していないです。試合では、キッチリ切り替えてできると思う」と言ったが、普段の練習からその意識を持ってやらなければ、試合で実現するのは難しい。
しかも次戦は、アウェイのバーレーン戦である。2次予選アウェイのクウェート戦は序盤から受け身になり、流れを一度も引き戻せず、逆転負けを喫した。あの悲惨な経験を繰り返さないために守備に力を入れ、全員守備の意識をマレーシア戦で実現させたはずなのだが……。バーレーン戦の直前合宿で、修正は効くかもしれないが、出来た、出来ないを繰り返すばかりでは、チームの本当の成長は見込めない。