F1ピットストップBACK NUMBER
ベッテルの王座は確定的だが……。
バトンと可夢偉の鈴鹿での秘策とは?
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byHiroshi Kaneko
posted2011/10/06 10:30
シンガポールGPの表彰台でのベッテル(右)とバトン。ホンダエンジンとチームを通して日本と馴染みの深いバトンは「日本は僕にとって第二の故郷。鈴鹿では全力を尽くす」と約束。さらに、震災復興への応援メッセージを語った
トラブル続きの予選では新パーツのデータを集積できず。
マクラーレンは当初、日本GPで新しいリアウイングを投入する予定だった。しかし、その2戦前のイタリアGPでレッドブルに惨敗を喫したマクラーレンは、その予定を2週間前倒ししてシンガポールGPに新リアウイングを持ち込んできた。
ところが、シンガポールGPでのマクラーレンには、新しい武器を利用する以前に、多くの問題が発生してしまった。
まず金曜日のフリー走行でロングラン中にバトンがブレーキングミスでコース上でストップ。レースに向けた走行データを十分に収集できないまま初日を終える。土曜日は予選Q2の2回目のアタックでハミルトンがパンクに見舞われる。予選で初めて装着したスーパーソフトがパンクしたことによって、ハミルトンは、予選に入ってからの路面コンディションでスーパーソフトがどのようなグリップ力を発揮するかというフィーリングを正確につかむことができないまま、ポールポジションを賭けたQ3のアタック合戦に臨まなくてはならなかった。
さらにQ3の最後のアタックではハミルトンのマシンに燃料が十分に供給されていないことが、ピットアウト直前になって判明し、アタックを断念。レッドブルが開幕から続けている連続ポールポジションを阻止することができなかった。
マクラーレン同様、可夢偉も鈴鹿での快走に賭けている。
逆転を狙ったレースではハミルトンがマッサと接触。
2番手からスタートしたバトンは初日のデータ不足が最後まで響いて、ベッテルのテールに入るまでは至らなかった。
タイトル争いはほぼ決着が付いたが、新しいリアウイングがどれくらいの効果があったのかどうかについての結論は出ないまま、シンガポールGPは終わった。
あるマクラーレンのスタッフは言った。
「2週間後が待ち遠しい。鈴鹿へ行ってガチンコの勝負をレッドブルとしたい」と。
鈴鹿へ賭ける思いは、マクラーレンのスタッフだけが持っているわけではない。次戦日本GPが、自身2度目の母国グランプリとなる小林可夢偉も同様だ。
シンガポールGPの予選でクラッシュした可夢偉。挽回を期して臨んだレースだったが、セーフティカー導入時にチームが誤ったタイミングでピットインを指示。結果、周回遅れのまま再スタートを切らざるを得ず、その時点で可夢偉のレースは終わってしまった。