青春GOLF ――石川遼に密着! BACK NUMBER
やっと20歳を迎えた石川遼の
酒、煙草、結婚観とは?
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byTetsuhiro Sugimoto/AFLO
posted2011/09/30 10:30
パナソニックオープン2日目は、9番ホールで、林に打ち込み5オン2パットのトリプルボギーを叩くものの16位にまで浮上。しかし最終日に崩れ、結局34位で大会を終えた
その日の食卓にいつもとさして変わるところはなかった。あえて違いを挙げるとすれば、近所に住む母方の祖父母が遊びに来ていたこと。あとは風呂上がりにケーキと一緒にシャンパンと赤ワインのボトルが用意されていたことぐらいだった。
ANAオープンで国内今季4度目の予選落ちを喫して、何年かぶりに自宅で過ごした9月17日。石川遼は20歳の誕生日を迎えた。
15歳で「ハニカミ王子」として鮮烈にデビューしてからもう5年が経った。驚くべき成長曲線を描いてきた石川の大きな節目の日。しかし、部屋にいた妹や弟もことさらにバースデーソングを歌うこともなく、なんとなくリビングに集まって、なんとなく家族で一緒の時間を過ごした。
石川はシャンパンボトルを手に取って栓を開けると、グラスに注いだシャンパンをなめるようにして少しだけ口をつけた。
「なんか苦い。甘くないなあ」
それが“大人”になった石川の感想だった。
勝利の美酒はOKでも勝利の紫煙は「絶対に吸わない」。
「優勝した後の1杯、というのをやってみたいとは思ってますよ。でも、問題はそれがいつおいしいと感じるかですよね。20歳になったからって急にお酒がおいしくなるわけじゃない。最初はコーラの方が絶対においしいと思う」
ツアー初出場で初優勝を飾ったマンシングウェアオープンKSBカップに始まり、10代のうちに勝ち取ったツアー優勝は9つ。勝利の美酒がコーラのおいしさを上回る時には、そこからいくつの優勝を積み上げているだろうか。
20歳になって解禁となるのはアルコールだけではない。たばこだって吸えるようになる。父・勝美さんをはじめ、サポートスタッフには喫煙者が多いため、石川は「僕の肺は真っ黒だと思いますよ」と苦笑いしていたこともあるほどだ。
ジュニアの頃から父がたばこを吸いながら運転する車に乗って各地を転戦していたし、プロゴルファーには精神安定剤的にたばこを吸う選手もいる。石川にとってたばこは決して縁遠いものではないはずだ。ただし、それで本人が吸うのかというとまた別の話らしい。
「近くで吸われるのが気になるんですよね。焼き肉みたいに臭いがつくじゃないですか。お父さんも最近は家では外に出て吸うようになったんですよ。今は吸う人はどんどん居場所がなくなってるし、肩身狭いでしょうね。まあ、僕は絶対に吸わないと思います」
勝利の美酒に酔いしれることはあっても、紫煙をくゆらせて勝利の味をかみしめる石川の姿は今後も見ることができないようだ。