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セリエAがテクニック重視の傾向に。
“小兵”ストライカーに注目せよ!
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2011/09/30 10:30
マキシミリアーノ・モラレスはリーグ最小の159cm。今夏移籍を果たしたアタランタの攻撃を牽引する。3月にはアルゼンチン代表デビューも果たした
身長はサバを読んでも積み重ねるゴール数は公明正大!?
「低身長+主将+決定力」に加え、「ベテラン」となると、33歳のディナターレ(ウディネーゼ)を忘れるわけにはいかない。
過去2シーズンの得点王は、今季も出足よく4戦3発とコンスタントに得点を重ね、4節ミラン戦での先制ゴールなど勝負強さを見せている。公称は177cmで、現地報道通りだと実に7cmもサバを読んでいることになるらしいが、積み重ねるゴールの数は公明正大だ。
彼にもミッコリにも、淘汰されずに生き残ってきた図太さと、超高額移籍金とは無縁のキャリアを送ってきた人情味がある。
小兵選手の活躍の裏には“テクニック重視への回帰”が。
なぜ突然、彼らの活躍が目立つようになってきたのか。
最近、イタリアサッカー界で言われるようになってきたのが、“テクニック重視への回帰”だ。とかくフィジカル重視のイタリアで、これまで不遇だった低身長の攻撃系選手へ思い切ってチャンスを与える傾向が出始めている。
近年、最も成功したと言えるのは、前述のディナターレとMFスナイデル(インテル)だろう。タフネスとスピードを武器にするDF長友佑都も、実戦でのシュート技術には目を見張るものがある。
これは言うまでもなく、メッシやシャビ、イニエスタといった実質170cm以下の選手たちがプレーの鍵を握る最強バルセロナの影響が大きい。小よく大を制す彼らへ範を取れ、とばかりに、活きのいい小兵たちが今季のセリエA得点王ランクを波乱味あるものにしている。いずれもボールを足元に納める技術が高く、俊敏で小気味よいドリブルで敵陣に迫る。確かなトラップからのクイックなシュートも共通点だ。
小兵FWと大型FWによる得点王争いの行方は?
もちろん、負傷で出遅れているイブラヒモビッチ(195cm/ミラン)や、爆発が待たれるフォルラン(180cm/インテル)、マトリ(183cm/ユベントス)ら本格派の大型FWたちとシーズン終盤まで得点ランク争いで競り合うのは少々酷だと言える。
しかし、昨季チェゼーナで頭角を現し、今季からユーベへステップアップを果たしたFWジャッケリーニ(167cm)は不敵に言うのだ。
「俺たちの相手は皆、怪物さ。でも怖いと思ったことはないね」
シーズンが深まるにつれ、彼ら小兵はいずれ淘汰されるのか、それとも増殖するのか。答えを出すには時期尚早だが、この突然の小兵ブームが「サッカーは誰にでも開かれたスポーツだ」という言葉をあらためて思い起こさせてくれているのは間違いない。