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軽症でも凱旋門賞断念を決めた
角居調教師の気概。
~無念のヴィクトワールピサ~
text by
片山良三Ryozo Katayama
photograph byYoko Kunihiro
posted2011/09/05 06:00
ヴィクトワールピサは凱旋門賞に勝てば引退の予定だったが、苦渋の決断を下した角居師
今年は凱旋門賞(10月2日、仏ロンシャン競馬場、芝2400m、GI)のために、4頭もの日本馬がフランスに遠征した。これはもちろん過去最多で、先達が積み重ねてきたほろ苦い経験がいい形で受け継がれている証だろう。
しかし、3月のドバイワールドCを制した“チームジャパン”不動のキャプテン、ヴィクトワールピサ(牡4歳、栗東・角居勝彦厩舎)が、渡仏後に凱旋門賞を断念した。左後肢の歩様に微妙な違和感が出たことが理由だった。飛節部分の軽度な炎症が原因で、獣医師は「使って使えないことはない、そんな程度」と診断したが、角居調教師の決断はストップ。往復だけでも1000万円以上の経費がかかるヨーロッパ遠征で、馬主に対する説明責任等を考えるとギリギリまで出走の可能性を探りたくなるのが人情だろう。しかし何ごとにもストイックな角居調教師は、結論を先延ばしにすることさえも潔しとはしなかった。