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勢いづく光星学院を迎え撃つ、
“世代最強”日大三の勝算は?
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byHideki Sugiyama
posted2011/08/19 20:30
日大三のエース吉永健太朗。世代屈指の本格派右腕として、春夏2度ずつ甲子園に出場。今年のドラフト候補としてプロスカウト陣からも注目を集めている
日大三が最大の難所を越えた。
関西との準決勝。試合前、日大三の監督、小倉全由は「今日は当然、吉永ですか?」という報道陣の質問に、わずかに声を荒げた。
「これだけ放って、当然ってのはないですよ」
エースの吉永健太朗は、前日の習志野戦で149球を投げたばかり。しかも、ここまで全4試合に完投していた。
以下が、ここまでの日大三の勝ち上がり方だ。
10日 1回戦 ○14-3 日本文理(133球)
14日 2回戦 ○11-8 開星(166球)
16日 3回戦 ○6-4 智弁和歌山(125球)
18日 準々決勝 ○5-0 習志野(149球)
小倉が「うちがいちばん強い山だったんじゃないですかね」と振り返るように、確かに、攻撃力の高いチームばかりのブロックだった。
準決勝に先発させると、決勝まで3試合連続で先発することになる。
そのため小倉は、この試合、甲子園初登板となる2年生の斉藤風多を先発に起用した。
疲弊した吉永を使いたくなかった小倉監督だったが……。
「昨日の時点で、吉永は、今日は投げさせない、って決めてましたから。壊れちゃいますからね。今朝も顔をみたら、はれぼったかったですし。だから、今日は1人2回ぐらいでもいいので小刻みに継投して、打撃陣には『10点とられたら20点とれよ』って言ってあるんです。できれば、吉永は使いたくないですね」
しかし、試合展開がそれを許してはくれなかった。
4回を終えたところで1-1のタイスコア。しかも、相手の先発、左腕の堅田裕太は尻上がりに調子を上げていた。
そんな中、5回表にバント安打と四球で1死一、二塁となったところで、小倉は斉藤をあきらめ、吉永をマウンドへ送った。
「決勝へ行くには勝たないとダメですからね。本当は5回までは投げて欲しかったんですけど。7回、8回にあんなに点が入るって、(その時点では)わからないですし」
打線は、吉永がテンポよく相手を抑え始めたことでリズムを取り戻し、7回に8点、8回に5点と大爆発。試合を決定づけた。