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宮城県・古川工の甲子園出場の意義。
地方の公立高校が変わってきた!?
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byKYODO
posted2011/08/07 08:00
甲子園球場で本大会前の練習をする古川工高ナインたち
県外から私学2強へと進学する選手のプレーが目立つ。
それは県外にも及んでいて、今回の夏の大会で20人のベンチ入りの選手を見ると、やはり県外から2強に進学してプレーしている選手が目立つ。
●東北(部員94人)
宮城 12人
神奈川 2人
秋田 2人
福島 1人
長野 1人
大阪 1人
奈良 1人
●仙台育英(部員101人)
宮城 9人
福島 4人
青森 2人
新潟 2人
岩手 1人
埼玉 1人
東京 1人
東北の場合は近畿地方にもリクルーティング網があり、仙台育英の場合は東北地方が中心という特徴がある。いずれもシニアリーグや中学校での実績がある選手が集まってくるから、公立校とは素質の面で格段の差があるし、設備に関しても圧倒的な差がある。
公立校の監督にすれば、東北と育英に勝つのは「ミッション・インポッシブル」に近いことだが、今年は仙台商が準々決勝で仙台育英を破り、古川工が準決勝で東北を破った。いずれも公立校であり、大きな勲章を手に入れたと言ってよい。
なぜ公立校が強くなってきたのか?
私学2強が決勝を前に倒れたことに関しては、現場では次のような声が聞かれる。
まず、民主党が政権を取ってからの方針で、公立校の授業料無償化が大きい。これまで私学に流れていた人材が公立校に進むケースがある。この政策は去年から実施されているが、現在の高校2年生からその恩恵を受けている。才能の流れは引き続き、公立に寄せられている。
加えて、2強は部員数が多く、当然のことながら試合に出られないケースが多い。「それでも東北に!」、「出られなくても育英で3年間やる」と覚悟を決める生徒もいるが、この2強に進むような選手であれば、公立校であれば下級生からレギュラーになれる可能性は極めて高い。
授業料は無償だし、地元の学校で1年の秋からレギュラーを目指す――。そういう考えを持つ家庭も増えてきた。