オフサイド・トリップBACK NUMBER
激化するマンチェスターの覇権抗争。
「C」がプレミアの勢力を塗り替える。
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byGetty Images
posted2011/08/06 08:00
マンチェスター・シティのオーナーであるシェイク・マンスール・ビン・ザーイド・アル・ナヒヤーン。サッカーだけでなく、ドバイには競馬場を作り、F1のフェラーリのチームにも莫大な投資をしている、アラブ首長国連邦(UAE)の王族にして将来有望な閣僚のひとりでもある
今シーズンの欧州サッカーには面白い共通点がある。
プレミア、リーガ、セリエ、ブンデスといった主要リーグのスーパーカップ(リーグ戦覇者とカップ戦優勝チームの王座決定戦)がすべてダービーマッチ、もしくはクラシコと呼ばれる好カードなのである。(プレミアはマンU対マンC、リーガはバルサ対レアル、セリエはミラン対インテル、ブンデスはドルトムント対シャルケ)。
これらのカードの中で、個人的に最も注目しているのは8月7日にウェンブリーで行われるコミュニティ・シールド(マンチェスター・ダービー)だ。ユナイテッドやシティに特別な思い入れがあるからではない。今回の試合は、リーグの勢力図の変化を占うという大きな意味を持っているからだ。
超大型補強で躍進したマンCは「プレミア版銀河系集団」に。
今年のコミュニティ・シールドが注目すべきカードになったのは、昨今のマンCの躍進に負う部分が大きい。2008年、マンCを買収したシェイク・マンスールは、「プレミア版、銀河系集団」の構築に着手。ロビーニョを約64億円でレアル・マドリーから招いたのを皮切りに、総額900億円ともいわれる補強計画をぶち上げ、真夏と真冬に選手のショッピングモールが開店するたびに人材をかき集めてきた。
かつてのインテル・ミラノやレアル・マドリーがそうであったように、買い物のバランスがとれているとは言い難いが、このような精力的な補強のおかげで、MFではミルナー、バリー、デ・ヨング、ヤヤ・トゥーレ、FWではシウバにジェコ、テベスにバロテッリと錚々たるメンバーが揃うこととなった。今夏も目ぼしいところでは、アーセナルからフランス代表SBのガエル・クリシーを移籍金約9億円で、アトレティコ・マドリーからアルゼンチン代表のアグエロを約48億円で獲得。テベスやバロテッリが離脱するという噂もあるが、着々と駒を揃えてきた。
たしかにこれが昨年までだったならば、冷ややかな目で眺めることもできただろう。
現に昨シーズンの開幕時に発売されたナンバーの別冊、「欧州蹴球名鑑 2010-2011」では、著者もマンCについて次のように記していた。
「選手リストを冷静に見れば、真のスーパースターが不在であることがわかる。さらに深刻なのは、攻撃や守備の『型』がない点だ。成績面では4強に食い込めれば御の字ではないか」