なでしこジャパンPRESSBACK NUMBER
なでしこジャパン、歓喜の決勝進出。
スウェーデン戦での意外な選手起用。
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph byMaurizio Borsari/AFLO
posted2011/07/14 12:35
1993年のアジア女子選手権で代表デビューした澤穂希。その後、北京五輪を含む3回の五輪出場、スウェーデンW杯から5回連続の女子W杯出場という偉大な記録を持つ
衝撃が走ったのは試合前日。
スタジアムでおこなわれた45分の公式練習のうち、報道陣に公開された冒頭15分の終了間際の出来事だった。
9対9で行った実戦形式で、試合の先発メンバーとおぼしきグループから永里優季が外れていた。代わりに安藤梢と2トップを組んだのは川澄奈穂美だったのだ。
ここまでの4戦で一度たりとも変更されなかった先発メンバー。ブンデスリーガでプレーし、女子チャンピオンズリーグで優勝も果たしたエースである永里が、ほぼ間違いなくこの試合で先発から外されるということが、見て取れた。
これは、指揮官・佐々木則夫からイレブンへの強烈なメッセージでもあった。
「日本代表の中でも群を抜いてすばらしくスタミナのある選手」(佐々木)である川澄をトップに置くことで、前線からのプレスをより徹底し、スウェーデンの攻撃パターンのひとつであるロングボールの出所を抑えろ、と言葉にせずとも伝えたのだ。これまでよりも更になでしこらしく、走り勝つサッカーを展開しようという意図だ。
澤のパスミスからいきなり先制点を奪われたなでしこだが……。
試合開始早々から、川澄と安藤の2トップは強烈なプレスをかけつづけた。
川澄は言う。
「自分は運動量を求められているので、守備ではプレスをかけ続けようと思いました」
ところが、前線からの守備でボールを奪い日本のペースになりかけた前半早々、スウェーデンにまさかの先制点を許してしまう。
前半10分、中盤の底で澤穂希から岩清水梓へのバックパスが予想外に短くなった。2列目のオクヴィストがこれを見逃さずにカットすると、自らドリブルで持ち込んで豪快に左足でネットを揺らしたのだ。
だが、この日のなでしこは慌てなかった。
「自分たちがやってきたことをやれば必ず結果はついてくると思ってプレーしている。サッカーのゲームには、ビハインドの状況はいくらでもあるので動じることはなかった」
と宮間あやが振り返る。