なでしこジャパンPRESSBACK NUMBER
笑顔で世界の頂点に立ったなでしこ。
最強アメリカを倒した“折れない心”。
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph byGetty Images
posted2011/07/18 14:30
ワールドカップトロフィーを高々と掲げ、喜びを爆発させる澤穂希らなでしこジャパンの選手たち。澤を中心としながらも、毎試合ごとに新しいヒロインが現れた、文字通りチーム一丸となって掴んだ栄光だった
劣勢でも、相手のペースを見越していたなでしこたち。
だが逆になでしこたちは、このサッカー以外の選択肢を持たない。つまり男子サッカーで、中東などの格下が日本に対して見せるような、引いて守って、前線の足の速い選手を走らせるようなサッカーや、長身選手を前に置きターゲットとするパワープレーのようなサッカーはこのチームでは成り立たないのだ。
前半のように受けにまわって蹴っているばかりのサッカーではなでしこの良さは出ない。佐々木は「落ち着いてつなげと指示するだけでいっぱいいっぱいだった」と前半を振り返る。
選手たちが逞しかったのは、前半の自分たちの出来と、相手のペースを見越していたことだ。安藤梢は言う。
「相手が飛ばして来ているのがわかった。だから前半0-0で折り返せばチャンスはあると思った」
日本は徐々にリズムをつかむが69分、前線でキープしようとしたところを奪われタテパス1本で運ばれると、後半開始から途中出場のモーガンに叩き込まれてしまう。それでも焦らないのが今のなでしこ。81分には右サイドから永里優季の速いクロスを丸山桂里奈が体をはってキープ、相手のクリアがこぼれたところを最後は宮間あやがネットを揺らした。
勝利を確信していたアメリカのほうが落胆ぶりは大きく、また安藤の言葉通りアメリカのプレーにも疲れが見えだした。
「心が折れそうになった瞬間? そんなの全然なかった」
延長戦に入っても、同様の展開が見られる。延長前半終了間際の104分に中央でフリーになったワンバックが左クロスを頭で合わせ勝ち越す。
ここで心が折れても良さそうなところだが、この日のなでしこたちは違った。
「まだ延長前半だったのでチャンスがあると思った。本当に焦ったのは、立ち上がりだけ」と近賀ゆかりが話せば、指揮官も、
「心が折れそうになった瞬間? そんなの全然なかった」と笑い飛ばす。
試合終了間際の117分には、宮間の左CKに反応した澤穂希がニアサイドに飛び込む得意の形で2度目に追いつくと、アメリカはメンタルごとやられてしまった。