佐藤琢磨 グランプリに挑むBACK NUMBER

痛恨のミス 

text by

西山平夫

西山平夫Hirao Nishiyama

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photograph byMamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)

posted2005/09/07 00:00

痛恨のミス<Number Web> photograph by Mamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)

 16周目、4位を快走していた佐藤琢磨1回目ピットイン、ロスタイム8.5秒。翌周バトンがピットイン、10.3秒。

 (よしッ!これならまずポイントは確実)と思いながらレースの成り行きを見ていた。

 ところが次にモニターTVに映った画を見て、目が凍った。なんと琢磨がまた給油しているではないか!VTRではない、リアルタイムの画だ。

 今度もロスタイムは8.5秒と短かったが、もう上位にはいられない。16位に転げ落ちて、結果的にはその順位でフィニッシュ。バトンは8位入賞だったがペースは琢磨の方が上だったから、普通に走っているだけで7位、少なくとも8位はあったろう。事実、1回目ピットストップは琢磨の方が約2秒短かったのであり、チームとしては琢磨をバトンの前に出して、軽いタンクでペースを上げようというアイデアを持っていたことが分かる。

 レース後、スクラム・インタビューに現れた琢磨と我々メディアは顔を見合わせたまま一瞬の沈黙を作った。

 「なんと言ったらいいか……」

 口火を切ったのは琢磨だった。

 「ピットアウトしたらすぐにチームから無線で『燃料入ってないかもしれないので戻って来いッ!もう1回給油だッ!』と言われてすごくショックだったのですが、ガス欠しないようユックリしたペースで戻って来るしかなかった」

 再度補給。しかし実際にタンクには給油リグから吹きこぼれるほどの燃料が入っていたというのだ!

 ポジション・ドロップも痛いが、普通60数kgの燃料で走るところを満タンの90kgで走るのだからマシンが重過ぎてペースが上がらない二重苦。さらに重いものを無理して走らせるからタイヤが傷む三重苦。

 「最後はアスカリ・シケインやパラボリカではフラフラでした」というのだから、完走するのに精一杯だったろう。精神的にも肉体的にもつらいレースだ。

 それにしても、琢磨の燃料補給に何が起きていたのか?

 ホンダの中本修平エンジニアリング・ディレクターは言う。

 「琢磨クンの給油の“二度打ち”ですが、給油装置のモニターにエラーが出てしまって、入ってないかもしれないということでもう一回ピットに入れたんです」

 ここでBARチーム(ホンダにあらず!?)は最初のミスを犯す。

 普通、給油量のチェックに関しては2重3重の保険をかけてあるもので、きわめて正確な給油量は分からないにしても、入ったか入らなかったかくらいは給油スケールの印を目視すれば簡単に分かる。

 それは措くとしても、BARチームは再びミスを犯す。バトンが給油する。その次に琢磨車に再給油する際、琢磨の給油装置が使えないことからバトンの給油装置を使ったのだが、それはいいとしてもこの時給油量のカウンターをゼロにリセットしなかったのが二つ目のミス。琢磨車に給油したら吹きこぼれるほどのガソリンが入っていたことは前述したが、このミスでトータルで何リッターのガソリンが使われたか分からなくなってしまった。

 ゆえにバトンの2回目のピットストップをガス欠防止のため予定より数周早くする。安全マージンが大きいゆえにマシンは余分なガソリンで重くなり、ペースはまったく上がらないという悪循環を生んだ。琢磨車に対するミスは仕方ないとしても、それにバトンを巻き込んだのは言い訳のしようがない。

 今回のレースはBARチームの初歩的ミスであって、琢磨はまことに惜しいポイントを落とした。チームの経験不足以前の問題で、よもやこんなミスを今頃犯すとは我々も思わなかった。

 あえて救いをさがせば、琢磨が3回目ピットアウトの際にウエーバーと“ピットレーン・バトル”をやり合うくらいレーシング・スピリットにあふれていたことと、1週間後にはスパ-フランコルシャンで挽回のチャンスがあるということくらいか。

 琢磨の戦いもあと4戦を残すのみだ。

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