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湘南ベルマーレ“平成の臥薪嘗胆”。
「生きるか死ぬかの500試合」 

text by

戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2009/12/10 10:30

湘南ベルマーレ“平成の臥薪嘗胆”。「生きるか死ぬかの500試合」<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

北京五輪の敗退で傷ついていた反町の心に火がついた!

 反町監督にとっても、ベルマーレからのオファーは野心的なチャレンジだった。北京オリンピックの敗退で傷つき萎えたサッカーへの思いが、再び燃え上がってきたタイミングでもあった。

「ハードワーク」と「チームのために」というキーワードは、反町監督によって「攻守の切り替えの速さ」と「相手を上回る運動量」として具体化され、そこに「考えるサッカー」が肉付けされていく。ベルマーレは第1クールから突っ走った。第2クールで4連敗を喫しても、反町監督は慌てなかった。

「相手もこっちの分析してくるわけだから、勝率を落とす可能性もある。慌てることはないんだ。自分たちのやっていることを信じて、粘り強くやっていこう」

 指揮官が繰り返す言葉は、スタッフと選手から不安を取り除いた。続けて語られる「勝敗の責任はオレにある。お前らは伸び伸びとゲームを楽しんでこい」という言葉に、選手たちは奮い立った。「J1昇格の経験」が生かされた、頼もしいメッセージだった。

反町監督の続投決定。そして次のスタートが始まった。

 J2でも中位規模だった予算が、J1昇格によっていきなり膨らむことはない。「大きなギャンブルはできない」と眞壁社長は語り、「補強はどうなるか分からない」と反町監督も話している。51試合の長丁場を戦い抜いたチームをJ1仕様へスケールアップさせていくことが、J1残留への第一歩となるだろう。

写真川沿いの練習グラウンド。「プレハブからJ1へ」が、スタッフたちの合言葉になっていた

 水戸戦の翌週も、チームはいつもどおりに相模川沿いのグラウンドで汗を流している。ここ数試合の緊張感からは解放されたが、弛緩した空気はない。

 坂本は表情を引き締めた。

「いまのまま上積みなくJ1にのぞんだら、絶対に痛い目にあう。J2で3位だったわけですし、僕らは一番下から、最下位から始まると思う。J1のチームと同じような準備では、差は縮まらない。オフの間から高い意識を持ってやっていきます」

 昇格決定から2日後、反町監督の続投が発表された。

 指揮官と強化部長は9日と10日に大阪へ飛び、Jリーグの合同トライアウトを視察。クラブのスケジュール上は来週からオフとなるが、彼らが本当の意味でオフの時間を過ごせるのは、年末年始のほんのわずかの時間だけである。反町は言う。

「ひとつの終わりを迎えれば、その瞬間から次のスタートが始まるんです。水戸戦の最後の笛は、今シーズンの最後の笛であり、J1昇格への笛でもある。昇格したら今度は、降格しないようにしなきゃいけない」

 11年ぶりのJ1での戦いは、すでに幕を開けている。

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