Jリーグ観察記BACK NUMBER
高原、長谷部の移籍を実現させた
敏腕代理人が語るJリーグの課題。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byTsutomu Takasu
posted2009/09/21 08:00
現役時代はMFとして活躍し、引退後に代理人資格を取得したトーマス・クロート。日本対オランダ戦も観戦した
日本の国外に住む外国人の中で、最もJリーグに精通しているのは代理人業界で働く人たちだろう。彼らはクラブのスカウト的な業務も任され、人材発掘のためにJリーグの映像をチェックしている。
その代表的な存在が、ドイツ人のトーマス・クロートだ。高原直泰と代理人契約を結んだのをきっかけに日本とのパイプが太くなり、これまで稲本潤一、長谷部誠、小野伸二、大久保嘉人のブンデスリーガ移籍を実現させてきた。もともと自らもブンデスリーガで活躍したサッカー選手で、ドイツ代表ではカールハインツ・ルンメニゲやフェリックス・マガトとプレーした。それゆえに“選手を見抜く目”には定評がある。
日本人選手の弱点はプレッシングにあり。
クロートは年に2、3回Jリーグを視察しており、最近では4月に川崎対大宮、浦和対京都をスタジアムで観戦した。
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この敏腕代理人は、現在のJリーグをどう見ているだろうか? オランダ対日本戦の前日、スタジアムに姿を現したクロートに声をかけた。
クロートはスタジアムのベンチに腰を下ろすと、まずはポジティブな面に触れた。
「私は約15年前からJリーグをチェックしているが、テクニックのレベルはかなり高いところまで来ていると思う。昨季までヴォルフスブルクを率いていたマガト監督が長谷部誠を高く評価しているのも、献身的なプレーができると同時に、テクニックがあるからなんだ。マガトはシャルケの監督になった今でも、『日本人選手を欲しい』と言ってるよ(笑)。日本は育成に力を入れたことが大きかったと思う」
ただし、Jリーグを高く評価するからこそ、まだ改善すべき点があると感じている。
「ヨーロッパのリーグと比べて最も違うのは、プレッシングの強さと速さだ。ヨーロッパのトップリーグの場合、体を弾き飛ばすくらいの勢いで、激しくプレッシャーをかける。ドイツに来た日本人選手は、まずそこに驚くからね。Jリーグは南米の影響を強く受けているからか、プレスが甘い部分がある」
確かに日本の守備が消極的と感じるヨーロッパの専門家は少なくない。元浦和監督のギド・ブッフバルトは「JリーグにはいいDFが少ないから、いいFWが育たない」と嘆いていた。