MLB Column from USABACK NUMBER
【番外編】
大統領選とセイバーメトリクス。
text by
李啓充Kaechoong Lee
photograph byREUTERS/AFLO
posted2008/10/03 00:00
いま、MLBはプレーオフで盛り上がっているが、当地で野球以上に盛り上がっているのが大統領選だ。たとえば、9月26日に行われたバラク・オバマ、ジョン・マケイン両候補による討論はTV視聴率31.6%を記録、5200万人以上が90分に及んだ討論を視聴した。
しかも、討論終了後も、「専門家」による勝敗判定・分析が延々と続き、発言の内容はもとより、身振り手振りのジェスチャーから目線の方向までが分析の対象とされ、大統領選の討論が、まるでスポーツのビッグ・イベントと変わらない扱いを受けているのだから恐れ入る。
このように、米国民の大統領選に対する「ノリ」は、スポーツに対する「ノリ」と変わらないのだが、先日、TVのニュース番組で、セイバーメトリクスの専門家が大統領選の結果を予測する「専門家」として登場したので腰を抜かすほど驚いてしまった。
この専門家、セイバーメトリクスの世界では有名なネイト・シルバーだが、本欄で何度も紹介したことがある成績予測システム「PECOTA」の発明者である(たとえば、今季開幕前、ヤンキース、レッドソックスに代わってレイズがプレーオフに進出する可能性もあるとPECOTAが予測していることを本欄で紹介した)。
PECOTAは、既存のデータに基づいて将来の結果を予測するシステムに他ならないが、シルバーは、類似の手法を大統領選に当てはめ、その結果を予測しているのである。http://www.fivethirtyeight.com/なるサイト(538人は大統領選の選挙人数)を立ち上げ、大統領選の予測結果を日々更新しているが、10月1日現在、オバマの当選確率85.4%(選挙人数で336対202)と予測している。
というわけで、当地では、大統領選がスポーツのビッグ・イベントと変わらない「ノリ」で扱われているだけでなく、その結果を、セイバーメトリクスの手法を使って予測することまで行われているのだが、「野球という複雑精妙なゲームの結果を予測することに比べれば、大統領選の結果を予測するなど赤子の手をひねるようなもの」と思うのは、野球好きの私の偏見のなせるわざだろうか。