Column from EuropeBACK NUMBER
オランダ代表・第3の男。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byPICS UNITED/AFLO
posted2004/05/25 00:00
オランダ代表のアドフォカート監督が「3バックの採用も考えている」とインタビューで明らかにしたところ、ヨハン・クライフが猛烈に反対した。
「自分もかつてアヤックスとバルセロナ時代に3-4-3を採用していた。でも、それは相手のほとんどが2トップだったからだ。現在のサッカーでは2人のセンターバックと、コントロールマンとして守備的MFをひとり置く4-3-3がベストだ」
クライフは日ごろから「オランダ代表の最大の弱点はDFライン」と語っており、DFの人数やシステムについては、とてもナーバスになっている。なかでもクライフが一番心配しているのは、ディフェンスラインから攻撃を組み立てることができるDFが少ないことだ。
だが、その問題を一気に解決できる若者が、アヤックスから現れた。そのDFは、20歳のジョニー・ハイティンガ――今年2月のオランダ対アメリカ戦でデビューしたばかりの新鋭DFだ。
昨季は左足のケガで棒に振った。アヤックスユース時代の同僚、21歳のファン・デル・ファールト、19歳のスナイデルのオランダ代表での躍進を横目に治療に専念する日々が続いた。しかし、今季ケガから復帰するとアヤックスでレギュラーに定着し、アドフォカートの守備の切り札として代表のスタメンに名前を連ねるようになったのである。配給力とテクニックに定評があり、4月のギリシャ戦では早くも代表初ゴールを挙げている。
ハイティンガは「まるで自分のキャリアは、バブルのようだ」と、代表への抜擢に驚いている。だが、すでに代表ではファン・デル・ファールトとスナイデルが、まるで10年も代表でプレーしてきたかのように中心選手として働いている。ハイティンガがこの2人のように結果を出しても、もうオランダ国内では驚きではない。
ハイティンガは、EURO本大会では右サイドバックでの出場が濃厚だ。地味なポジションだけに、ファン・デル・ファールトやスナイデルのように脚光を浴びる機会は少ないだろう。だが、もしオランダ代表が死のグループを突破して、1988年以来のEUROの栄冠を手にしたなら。この遅れてきた第3の男こそが、最大の影の立役者になるのかもしれない。