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再び手術に挑む“ガラスのエース”。
斉藤和巳の止まってしまった時間。 

text by

田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2010/02/11 08:00

再び手術に挑む“ガラスのエース”。斉藤和巳の止まってしまった時間。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

1998年に右肩に初めてメスを入れ、今回で手術は3度目となる。昨季まで2シーズン連続して全休だった斉藤。今季の復活も難しいと噂されているが……

不安や苛立ち焦燥感……プロとしての地獄の苦しみが続く。

 ふたりは投手の最高の栄誉である沢村賞に輝くなどチームの柱的存在でありながら、故障期間が長かったため通算勝利が100勝に達していない。これらは悲しいことに、今の斉藤と共通する部分でもある。

 つまり、「ガラスのエース」ということ。

 言葉の響きはいい。「滅びの美学」にも似た儚さがある。何より他者は、これを「伝説」とし美化することを好む。すでに引退している今中や川崎なら、今となってはそれを過去のものとして受け入れるかもしれない。ただ、未だ現役に強いこだわりを持つ斉藤からすれば、嬉しくも何ともない称号であることは間違いない。

 完治する、往年のボールが投げられる確証が持てないまま生活をする苦しみは本人にしか分からないものだ。不安や苛立ち焦燥感。もしかしたら、諦めそうになる日だってあるかもしれない。だが、それでも、と自分を奮い立たせるのもプロの仕事である。

<可能性が無くなった訳でないのに背をむける事は、自分の中では出来ません>

 1月31日のブログで本人もファンに強く訴えかけている通り、可能性はゼロではないのだ。

斉藤和巳という選手を信じ、そして最後まで見届けたい。

 だからこそ、斉藤和巳という投手を信じてみたくなる。というより我々は、斉藤和巳という投手を最後まで見届けなければならない。

 まだ、斉藤和巳の時間は止まったままだ。止まっているのだから焦る必要はない。再び時計の針が動き出す、一軍のマウンドに上がる日が来るまで、じっくりと右肩と会話をすればいいのだと思う。

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