佐藤琢磨 グランプリに挑むBACK NUMBER
ついに途切れた完走
text by
西山平夫Hirao Nishiyama
photograph byMamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)
posted2006/04/28 00:00
「スピンしちゃいました、すいません」
レース後、佐藤琢磨はたった一言、出迎えた鈴木亜久里にそう謝った。
最後尾18位走行中の45周目、下りながら直角コーナーが二つ続く通称“リバッツァ”で飛び出してしまったのだ。残念ながら連続完走は「3」で途切れた。
「クラッチ・トラブルが出ていたこともありますが、バンピーな路面に乗ってしまって止まり切れず、縁石に乗り上げてターン15(リバッツァ出口)でマシンのリヤが流れてスピンアウトしてしまいました」というのが琢磨自身の説明だった。
第4戦サンマリノ前に琢磨はスペインのバルセロナで3日間のテストランを行った。
ところが油圧系のトラブルが頻発し「直しても直してもパンクしてしまう…」状態で、メイン・メニューのサンマリノ用タイヤ・テストができずじまい。けっきょくスーパーアグリF1チームはブリヂストンの一世代前のタイヤで戦わざるを得なかった。
ところが、テストができなかった割には金曜、土曜日と順調で、ポジションは指定席の21位だったものの、いちばん間近な敵ミッドランドのアルバースとは0.6秒差。決勝に期待がかかった。
だが、今回のレースは最初からキレが見られなかった。
「スタートはこれまでと違ってあまりよくなく、1〜2コーナーでアルバースを抜いたのですが、すぐにセーフティカーが出てしまって、ボクがまだリバッツァにいる時に再スタートが始まったので戦列が尻切れトンボとなって前に追いつかない。それでチャンスを捉え切れなかったんです」という状況。
その後はベストを尽くしたドライビングを展開し、ピット作業も短い時間でうまく行ったが、ハンドリングが次第に難しくなり、コーナーを満足に曲がれない状態に陥ってしまう。最後はクラッチ・トラブルの発生をキッカケにスピンし「連続完走が止まって残念…」な結果となったのだ。
たしかに予選でミッドランドと接近したタイムが出せたが、それはコースレイアウトがスーパーアグリF1チームのマシンの不利が表れにくかったからで、鈴木亜久里に言わせれば「ウチは背伸びして戦っている状態」に過ぎない。琢磨が言うように「マシンは絶対的なダウンフォース不足…」であり、それが乗りにくさとなって表れ、ちょっとした変化でスピンしてしまうのだ。連続完走は途切れたが、パフォーマンス不足のマシンで戦っているとあれば、いつかはその日が来る。むしろ開幕3戦の方が異様だったと言ってもいい。
基本は4年前のマシンであるSA05で戦っている限り苦しいことには変りはなく、琢磨は次戦ヨーロッパ・グランプリ(ニュルブルクリンク)を「新しいタイヤが使えるので楽しみです。それに高いトップスピードも必要とされるレイアウトなので、そこの部分は他のチームには負けていない。チャンスはあると思う」とコメントするが、そう言うことで自らを奮起させているフシがないでもない。
新車SA06のデビューを早く待ちたいが、それは「いまデザインを始めたところ」(鈴木亜久里代表)なのである。