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今の時代、本当に必要な監督力とは?
仰木彬と星野仙一、「怖さ」の違い。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byNaoya Sanuki
posted2011/06/13 11:35
「知将」「魔術師」と呼ばれた恩師・三原脩の薫陶を受け、ついには名将となった仰木。「仰木マジック」と呼ばれた名采配は、「三原マジック」に倣った称号である
絶対的な戦力不足を仰木独特の人心掌握術で補った。
仰木オリックスは阪神大震災が起きた年、1995年に「がんばろうKOBE」というキャッチフレーズを掲げ、劇的な初優勝を飾った。
前年2位に食い込んではいたものの、けっして潤沢な戦力を擁していたわけではない。猫の目打線に象徴される仰木独特の人心掌握術で戦力不足を補っていたのだ。
近鉄時代の教え子で、現在は北海道日本ハムの監督を務める梨田昌孝は仰木のうまさをこう表現する。
「無い袖を振るっていうのかな。持ってないのに、何か持っていそうな振りをするのがうまかった。はったりのきく人だったよね」
復興のシンボル、楽天は、スタートこそ順調だったが、ここにきて早くも選手層の薄さを露呈し、下位に沈んでいる。
見える怖さもカンフル剤としては大事だ。だが、今の楽天に必要なものは、温情よりも非情、強かった頃のオリックスに漂っていた見えない怖さを醸成させることなのではないだろうか。