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シャルケは第2のチェルシーか?
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安藤正純Masazumi Ando
photograph byGetty Images/AFLO
posted2006/11/08 00:00
![シャルケは第2のチェルシーか?<Number Web> photograph by Getty Images/AFLO](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/7/2/350/img_726646cc60fda29e6011b2e48d22ee4e17621.jpg)
突然ですが、謎かけを1つ。シャルケ04と掛けて何と解く?「株式市場に上場したIT企業と解く」。その心は?「人気が先行するが、中身がよく分からない」。拍手がまばらだったようなので、もう1つ。「新興宗教と解く」。その心は?「信者以外から尊敬されず、世間ではつねに批判の的」。パチパチパチ。
バイエルン・ミュンヘンの一人横綱時代が長く続くドイツサッカー界で、シャルケは今季こそバイエルン追撃の一番手と期待されていた。しかし肝心のパフォーマンスは昨季からまったく改善されず、ファンのため息は深まるばかり。あまりの不甲斐なさにファンはついにバイエルンとの試合で抗議行動に打って出た。なんとホームで、一切応援をしないというのだ。6万人を収容するスタジアムを沈黙が支配する奇妙な光景は想像するだけでも恐ろしい。クラブが生まれた1904年にちなんで19分4秒間だけの抗議だったが、これに発奮したのか、20分までに2点をもぎ取る。だがこの後がいけない。2点差を簡単に追いつかれ、結局ドローとなった。ファンのブーイングはすさまじかった。
だがこんな試合展開、どこにだってある。ここで本筋を見失ってはいけない。シャルケがファンとメディアから徹底的に叩かれるのは、クラブの将来像が危うくなっているからだ。チーム内では、FWアザモアがロッカールームで監督批判をしたという話が外部に漏れて、その犯人探しが行なわれている。鬼より恐いGMが死ぬまで権力を握っているクラブで“密告”が行なわれたとなれば、誰もが疑心暗鬼となりサッカーに集中できないではないか。
もう1つ。ロシアから『ガスプロム』社がスポンサーとしてシャルケに進出した。チームの人気に便乗して社名を欧州で広めようとする作戦だ。同社が要求した条件をシャルケが満たせば、5年で総額187億円を手にすることができるという超大型契約。もっとも「5年連続ブンデスリーガ優勝とチャンピオンズリーグ出場」など達成できるわけがなく、実際に受け取る額は年18億円程度であろう。それでも300億円の借金の穴埋めとしては、渡りに船なのだ。
リーグ規約により外国企業が経営権を握ることはできず、その点では安心できるものの、かつて炭鉱で栄えた町が、同業ともいえるエネルギー会社に乗っ取られるような感覚は相当に辛いものがあるはず。
シャルケは第二のチェルシーにならない──。クラブ会長はこう断言した。青白く光るホームスタジアムは今後、「ガスプロム・トリビューネ」に変更される。そしてユニフォームにも同社のロゴが踊ることになる。これにより、借金とスキャンダルに揺れる伝統は見事に継承されるわけだ。そこで最後の謎かけを。
シャルケと掛けてロシア人気質と解く。その心は?「本当はしゃれっ気(シャルケ)が分からない」。お後がよろしいようで。
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