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レアル、ゆく人、くる人。 

text by

鈴井智彦

鈴井智彦Tomohiko Suzui

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photograph byTomohiko Suzui

posted2005/08/12 00:00

レアル、ゆく人、くる人。<Number Web> photograph by Tomohiko Suzui

 マドリッドからシカゴに飛んで、ロス、北京、東京、バンコクと流れていったレアル・マドリーは数日間のオフを過ごしたのち、オーストリアで合宿を張った。「近代的な姿だ」とペレス会長は鼻を高くするけれども、選手はたまったもんじゃない。世界1周のワールド・ツアーではほとんど睡眠は移動の飛行機の中だったという。2日で1試合のペース、そして移動。いくらビジネス・クラスといえども、これはキツイ。でも、これで高給取りの選手たちの給料がまかなえる。クラブの経済状況も選手は理解しているから、我慢する。ベッカム様の人気は、ヨン様だけでなく、今やパク・ヨンハにも負けていたかもしれないが……。

 さて。アメリカ・アジア遠征を終えて、レアル・マドリーにはいくつかの新展開があった。FCバルセロナで5年、レアル・マドリーで5年を過ごしたルイス・フィーゴがスペインを離れてイタリアへと旅立った。

 「まだまだ、マックスのレベルでシーズンを過ごすことはできるさ。インテルに来たのもタイトルを獲るためだ」とフィーゴ。インテルでは背番号7。年俸はレアルのときより数百万ユーロ下がったけど、5億ぐらいだといわれている。しかも、スペイン語、英語が堪能なポルトガル人だけに言葉で苦しむこともなければ、今シーズン、ソラリとサムエルといったレアルの仲間もインテルに移籍したこともプラスだろう。昨シーズンもカンビアッソがインテルに移っていることから、レアルとインテルにはいい移籍のパイプが築かれたということだ。

 ペレス会長が最初に獲得したビックネームが去ったが、今季もロビーニョにバプティスタといった大物アタッカーを釣りあげた。バルサに対抗してか、ブラジル色を濃くしたレアル・マドリー。これでルシェンブルゴにロナウド、ロベルト・カルロス、ロビーニョ、バプティスタが揃った。ロビーニョは、8月24日まではサントスの選手なのでブラジル選手権を5試合消化してからレアルに来る。おそらく、開幕戦は難しい。

 しかし、こうも人材が集まると、監督の構想から外れる選手も出る。それが、ジダンかラウールかとなると、驚かずにはいられない。トップ下争いがふたりに託されるというのだ。

 「ラウールとは争わない。全員と争うんだ」というジダンは、フランス代表にも復帰する。かなり嬉しいらしく、ワールドカップ予選などでチームの代表組が抜けたときには、いつも辛かったという。「残った選手で練習したり、休日を過ごすことになったりして、少し寂しかったかな」と。

 ジダンと同じ30代のエルゲラは悩んでいる。フィーゴの次にレアルを追い出される可能性があるからだ。「ボクはレアルで続けたい。でも、クラブは30歳というボクの年齢を問題と考えているようだ」とエルゲラ。

 この話に食いついてきたのが、バルサだった。あと、1年で契約が切れるエルゲラを獲得しようではないか、と。エスパニョールでプレーしていた時期もあるだけにバルセロナの街には馴染んでいる。プジョールとはスペイン代表でも旧知の仲だ。実現すれば、面白い話だとは思うけど。

 「今シーズンは競争があって良い」とルシェンブルゴは笑みをこぼす。確かにチーム内で争いがあってナンボのプロフェッショナルだ。ロビーニョもラウールもジダンも、誰であっても絶対的といえる選手は存在しない。ウッドゲートも戻ってきた。オーウェンとともに昨シーズン、レアルに入団したイギリス人だが、手術、リハビリ、手術、リハビリで、いまだベルナベウに立ったことがない。しかし残念なことに、ベッカム、オーウェン、ウッドゲートのイングランド組が揃ってプレーすることもなくなりそうだ。「イギリスの4、5チームから話はきている」とオーウェンは言っている。短い出場時間のなかでゴールを決めてきたが、あっさり1年でプレミアへと追い返される。ワンダーボーイの背中に、哀愁が漂う。フィーゴよりジダンより、エルゲラよりも。

レアル・マドリー

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