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「わが家のルール」 菊池雄星のルーツを探る。 ~特集『天才男子のつくりかた』~
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byKeisuke Kamiyama
posted2009/12/22 10:30
夏の甲子園、敗れてもなお観衆を魅了した花巻東のエース。150kmを超える剛速球の持ち主は、マウンドを降りても献身的な応援で仲間を鼓舞し続けた。大勢の報道陣に囲まれても嫌な顔ひとつせず、丁寧な受け答えに努める。試合後には大泣きし、国内かメジャーかを迫られ、また涙を流す――。
ただひたすらにまっすぐな、純朴を絵に描いたような青年は、みちのく岩手の地でいかにして育て上げられたのか。
ただひたすらにまっすぐな、純朴を絵に描いたような青年は、みちのく岩手の地でいかにして育て上げられたのか。
なんとも間の悪い涙だった。
「いろんな人に迷惑をかけてしまったな、っていうのがあって。ただ、誤解を与えてしまったことは申し訳ないんですけど……」
日本プロ野球か、メジャーリーグか――。
「20年にひとりの逸材」と言われた花巻東のエース、菊池雄星の進路に関する報道合戦が始まったのは、8月24日、花巻東が夏の甲子園の準決勝で敗退した翌日のことだ。
みちのくの18歳は、その間、ボールを1球も投げなくとも、何度となくスポーツ紙の1面を飾った。そんな前代未聞といってもいい騒動に終止符が打たれたのは2カ月後のことだった。日米合わせて20球団との面談を終えた菊池は、ドラフト会議を4日後に控えた10月25日、花巻東で記者会見を開いた。
「日本でプレーさせていただきたいと思います」
それが、菊池が顔中ににきびを作った末に選び出した答えだった。菊池はたどたどしいながらもいつもの丁寧な言葉遣いで約15分間、自分の思いを語った。そして、すべてを語り終えたと思いきや、突然、菊池の頬を涙が次々とつたい始めた。