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キケ・フローレス 「戦術を語るには2日かかる」 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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posted2007/05/17 23:35

組織的な攻撃のためには机の上での勉強も大切だ。

 約束の時間から遅れること1時間、キケ監督がバレンシアのクラブハウスの応接室に現れた。なぜ遅れたかというと、選手たちの練習が終わったあとに、監督自ら居残りでランニングしていたからだ。芝生に寝転んで腹筋、側筋、腕立てまでしていた。芸能一家に育った彼にとってボディーラインを維持することも大事な日課のひとつらしい……。

 時間は限られているので、すぐに本題に入った。あなたは相当戦術にこだわってますね、と切り出すと、彼は一瞬驚いた表情をしてから、低い声で笑った。

 「シー(そうだ)。私はあらゆる角度から戦術を考えている。全体をコンパクトにすること、組織的に動くことに重点を置いている」

 普通、カウンター・サッカーというとつまらない印象があるが、バレンシアの場合は見ていておもしろい。そう伝えると、いいところに気がついたなと言わんばかりにキケの口元が緩んだ。

 「それを説明するには、まず私がどうやってチームを作っているかを知ってもらう必要がある。私はビデオ分析を大切にしている。特にシーズン前、チームの土台を作るときにね」

 キケのパソコンには、ピッチ上の選手を丸で示し、ポジショニングやフォーメーションを分析するソフトがインストールされている。その解析映像を選手に見せて、ひとりひとりのポジショニングを修正するのだ。

 「バレンシアの攻撃のコンセプトは、相手からボールを奪ったら素早く攻めるカウンターだ。それを実現するには全体が組織的に動き、かつ全員が正しいポジションを取っていなければいけない。だから、机の上での勉強も大切になってくるんだ」

 キケにとってビデオ上映は、もはや切っても切れない関係にある。今季のシーズン前、キケは練習の前に必ずビデオ・ミーティングを行った。

 「まずビデオで、『今日はこういう組織的な動きをピッチでやるぞ』と伝えてから、練習を始める。ビジュアルから入っていく、というのは大事なことだからね。映像を見たあとにすぐに実践すれば、組織力は格段に上がる」

(以下、Number678号へ)

[THE EUROPEAN CLIMAX]蹴球戦略論。

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